第26話 魔法習得と格闘術(5)
「…それでは最後に、合格試験をしたいと思います。」
エレシアは冷静さを保った声で「はい。」と返事をする。
「それでは、まず初めに魔法の分野から。人の姿、ドラゴンの姿それぞれで魔素を取り込みなさい!」
エレシアは言われた通りに人間の姿で魔素を取り込み、そのままスムーズにドラゴン化をしてドラゴンの姿でも魔素を取り込む。
「上出来です。次に、魔法の試験をします。私の右手の方を向き、攻撃魔法『ブラスタ』、防御魔法『リニエスタ』、回復魔法『キュアー』、アシスト魔法『パラポワ』、特性魔法『プロリエイト』をそれぞれ使いなさい。ただし、パラポワとプロリエイトに関してはプルピィからもらったブレスレットの付与魔法を使いなさい。」
次は魔法の分野
エレシアは横を向いて右手を前方へと突き出し、それぞれ魔法を唱える
『ブラスタ』
右での先から魔法陣が現れ、そこからエネルギー弾のようなものが飛ばされる
『リニエスタ』
自身の周りに小さなエネルギーを衛星のように自分の周りを回るように飛ばし、遠距離攻撃を防ぐ。
ためしにリフリアが針のようなエネルギー弾を打ち込んでみるが、エレシアの周りを回っていたエネルギーが薄いエネルギー膜を張ってそれを防いだ。
エレシアは言われてもない防御魔法のテストに少し驚きながらもそのまま魔法を使う
『キュアー』
自身の肉体を回復させる魔法。
今は目立った傷がないのであまり効果がわからないが、ちゃんと正常に魔法が使えている。
エレシアは右手を下ろし、左手を突き出した。左手にはプルピィからもらったブレスレットが可愛く取り付けられている
エレシアは残りの魔法を、プルピィから貰ったブレスレットにある付与魔法を使って発動させる
『パラポワ』
自分の立っている場所に魔法陣が現れ、自分の魔素を強化する。
『プロリエイト』
自分が強く願ったものを瞬時に取り寄せる技
今回もいつもと同様にリフリアがマナ補充のために飲む小瓶を取り寄せた。
エレシアは一通りの魔法を全て使い終わり、リフリアの方を向いて小瓶を渡す。
「上出来。それに、小瓶を取り寄せるところも追加ポイント。」
リフリアはエレシアから小瓶をもらい、それを飲み干して再びエレシアに試練を与える。
「魔法の習得は合格です。次に格闘術の試練を行います。まずハイブリッド型になりましょう。」
エレシアは軽く尻尾を生やしたのちに足を肩幅よりやや広めにとって深呼吸をする。
左手、右手を地面に向かって順番に殴り、その振動を利用して両手の鱗を出現させて両足は靴が破れないように尻尾からの鱗伝達で衣服ごと囲い込む。
最後に自分の胸より少し下の部分を手でドンと叩いてお腹と背中の鱗を出現させ、顔全体をドラゴン化させてハイブリッド型を完成させる。
「少しだけ変身時間が長いですが、とりあえずは成功です。それでは…」
リフリアは創造魔法を使って騎士のような敵と鎧を着た敵を出現させる
「それぞれの敵の特徴を読み取って一番効率の良い倒し方で倒しなさい。」
リフリアの命令ののち、魔法によって作られた敵が一気にエレシアの方へと向かってくる。
(一人は騎士のような見た目をしているが防御力はそこまでない。どちらかと言うとパワー系だ。もう一人は剣こそそこまで長くはないものの防御に特化している。鎧を着てなかなか打撃が通らなそうだがスピードも遅そうだ。)
エレシアは瞬間的な判断のもと、大きく二歩後退する。
(鎧のやつはスピードがない!距離を取ればパワー系のやつが食いつくはず!)
追ってきたのはやはりパワー系だ。
エレシアは一気にパワー系と距離を詰める
上から振り下ろされる剣を左手の鱗でガードし、右手で相手の懐に一発、強烈な打撃を加える。
そのまま畳みかけるように足を引っ掛けて転ばせ、顔面に強い蹴りを当てて一人目を倒す。
(なかなかにキレの良い動き…この短時間でよくここまで…)
リフリアはエレシアの成長に感動しながらもその様子を見守る
一体目を処理し終わった頃に二体目がやってくる
(こいつは物理攻撃に強い…となると魔法だ!)
エレシアは敵の周りをグルグル高速で移動して相手を惑わす
鎧を着た敵はエレシアの素早い行動に追いつけず、そのまま足が止まってしまった
(作戦は完璧、あとはこれで…!)
エレシアは鎧の敵の背後から一気に距離を詰めて、右手の魔法陣を背中に当てて魔法を唱える
『パルスインパクト!』
魔法は熱い甲装を貫通して内部に直接ダメージを与える
鎧の敵はそのまま撃沈し、無事リフリアが作り出した敵二体を倒し切った。
「上出来です。それでは…」
現世に戻ると期待してリフリアの話を聞くエレシアに、リフリアは大きな魔法陣を作り出して巨大な敵を作り出す。
「この敵を倒してみてください。」
「えぇ!話にないよそんなの!」
今まで格闘術の実戦でもみたことのない巨大な敵に、エレシアは後退りをする
(エレシア様…勝てる試合は誰でも冷静に対処ができる。ですが、このような未知の敵を相手にする時が一番貴方様には向いています。弱い自分をいかに心の中に封じ込めて戦えるか…それが大切です。)
リフリアはどうにかして倒そうをするエレシアを見守った。
(こんなに大きな相手…どうやって!)
エレシアは距離をとって魔法『ブラスタ』『バスターダ』を打つが、全然効いていないように見える
「なんなのコイツ!」
エレシア距離を取りながら魔法を使い、巨大な敵から逃げながら戦う
エレシア五、六人分もありそうな大きさを誇る巨大な敵はエレシアを捕まえるために大きな手を広げて捕まえようとする。
エレシアはそれをかろうじて避けながら逃げるしかできなかった。
「習ったことを思い出さない!エレシア様が習ったことは基礎であり応用でもあるのです!」
その言葉を受け取って、エレシアは冷静に相手を分析する
(私より6倍ほどある大きな敵、大きい敵だからスピードは遅くパワーは絶大…魔法もあまり効かないから相性は物理的なものの方が良さそうかも)
エレシアは逃げるのをやめて敵が手を伸ばしてくるのを待つ
(…来た!)
巨大な敵の手を華麗に避けながら、腕の上に乗り、ガンガン駆け上がってゆく。
足の爪を食い込ませて落ちないようにしているがその感覚がなんともグニっとしていて心地悪い。
「えぇぇぇぇい!私が倒すんだ!」
エレシアは肩まで上り詰めた後、リフリアから教わったことを思い出す。
(弱点がある敵は弱点を隠す。上手に隠す敵もいれば無難にわかりやすく弱点を隠す敵もいる。今回は…)
巨大な敵は私を振り払おうとしてくるがそれを耐えて相手の様子を探る
「私をよく振り落とそうとするね。ってことは弱点は頭の方か?」
エレシアは魔法で自身の身体能力を向上させ、大きく跳び上がる
巨大な敵の頭には違和感なほどに凹んだ部分があるのを見つけた。
「やっぱりそうだ。チェックメイト!」
エレシアは右手を大きく引いて空中から落下し、巨大な敵の凹んだ部分にぶつかるところで右手を勢いよく突き出して殴った。
「ぶぅおぉぉぉぉぉお!!」
巨大な敵の呻き声と同時に敵はバランスを崩して倒れ、エレシアは魔法『ファント』を地面に打って落下スピードを軽減し、無事に降りることに成功した。
「戦ったことのない相手でさえ倒すとは…完璧です。私から教えれることは以上です。立派に育ってアーレスの友に戻れることを期待しています。」
エレシアはリフリアの方へと駆けつけて「ありがとうございました!」といい笑顔で放った。
「それでは元の世界に戻りましょう。ギンも待ってます。」
そう言ってリフリアは手を差し出して魔法を詠唱する
「ハインフロール解除、元の世界へ!」
二人はフラットな白磁色をした世界を後にした。
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