都市ルベリハルコン編
第7話 中枢都市ルベリハルコン
ドリアグラ王国
中枢都市〜ルベリハルコン〜
人間を含む約二十種族もの多様な種族からなるこの都市は、総勢およそ八十万を超える巨大な都市。
四季がはっきりと分かれているこの地域は地形を利用した建物や道が多く、異種族と人間が共存するようになった年から名を馳せている有名な都市だ。
昔から異種族同士が仲良くしているのはもちろんのこと、人間も一種族として他の種族と仲良く生活をしている。
エレシアは深い森をカーバンクルの言われた通りに潜り抜けて、都市付近までやってきた。
(すごい…あれが都市なんだ…。)
草の茂みから顔を出して都市の様子を伺う。
初めてみる大きな建造物に、初めて出会う種族、どれも新鮮でワクワクが止まらない。
ただ、同時に不安の気持ちもある。
(カーバンクル達が言ってた通り、都市に入るには手前の大きな壁を通らないといけないみたいだわ。)
基本、都市の周りは壁で覆われており、野蛮族と呼ばれる森を拠点とする者達やイノガーなどの動物を都市に通さないようになっている。
(カーバンクル達の話によると、この壁はあくまで地上だけの見掛け倒し…どこかに都市への隠し通路があるって言ってた。)
都市の壁にももちろん出入り口はあるものの、そこは警備が厳しくてエレシアが堂々と正面から入るのは相当なリスクがある。
そこで使うのが隠し通路だ。
普段は狩人や特殊捜査員などが使う通路なのだが、どうやらそこなら警備も薄く、都市に入るには一番いい方法らしい。
(まずはそこを探さなくちゃ。)
エレシアは姿勢を低く保ったまま隠し通路の場所を探すのだった。
少し歩けば外から見える都市の気配もガラリと変わる
さっきまで見えていた大きな建物が並ぶ団地のようなものは見受けられず、次はさまざま言語が飛び交いながら騒然としている風景に変わった。
具体的に何があるのかは壁があるせいでわからないのだが、たくさんの声がすることから市場のようなところなのかとなんとなく予想がつく。
(初めて聞いたことのある言葉…いろんな言語があってそれぞれが別々のところで話し合ってるのに、私には全部意味がわかる……)
カーバンクルが掛けてくれた言語魔法の効果だろう。
正直聞き取れない言語も結構あるのかと思っていたのだが想像以上に色々な言語の意味がわかる。
それは単に言葉を脳で理解して意味を習得しているのではなく、未知の言語を瞬時に自分の知っている言語へと変換、それを頭の中で再生して言語を読み取っているような、そんな感覚がする。
エレシアは賑やかな場所を後にして隠し通路のある場所までまた進んでいった。
しばらく姿勢を低くして歩いていると、壁の内側も静かな場所に辿り着いた。
(気配がない…ここは普段誰も通らない場所なのかな。)
様子を伺いながら草むらから顔を出して壁の周りを見ると、不自然な形の草を見つけた。
明らかに他の草との色合いが違う。生き生きしている色が返って胡散臭さを醸し出している。
エレシアはゆっくりとその場所へと行き、違和感の感じる草を手で触ってみる
(やっぱり、、これ、偽物だわ。上手に作られてるけど葉っぱ特有の行動を示してない。)
普段なら軽い力でも横に靡くのに、この草は明らかに触った時の動きが不自然だった。
エレシアは違和感のある草の根本、地面を手当たり次第探ってみる。
すると、とある場所で何やら金属でできたとってのような物に手が当たった。
(これは?)
エレシアはその金属でできたとってのようなものをぐぐっと持ち上げてみる。
隠し扉はミシミシと音を立てながらエレシアによって開かれ、地下通路へと通じる道を出現させた。
頑丈な扉なだけあって相当な重さがあったが、なんとか開くことができた。
おそらくここがカーバンクル達の言っていた地下通路だ。
(本当にあった…ここから中に入れば街に入れるんだよね…)
多少の恐怖心はあったものの、それ以上に今は好奇心が勝っていた。
エレシアは扉が閉まらないように片手で押さえながら地下通路へと足を踏み入れたのだった。
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