【第2話】二人でひとつな無敵の兄弟
──天界・女神の神殿──
「……残念ながらあなたは死んでしまいました、これから異世界で第二の人生を歩んで頂きます」
「肉体を下界に構築しましたので、それがあなたの魂の器となります」
「異世界!異世界だってよ!俺ワクワクしてきたぜ兄貴ィ‼︎」
「騒ぐなドースキン、女神の前でくらい口を慎め」
「でもよ兄貴、異世界だぜ異世界!退屈だった前の世界には無い冒険が待ってるんだぜェ!」
「すまない……こんな騒がしい弟分で」
「いえ……それは構わないのですが……」
──とある酒場──
「……という訳で俺達は異世界から来た"転生者"という奴だ」
酒場に来た二人組の男のうち、オールバックヘアの細身の男の方が語った。
どうやらこの2人は"転生者"らしい。
転生者というのは俺も聞いた事がある。
なんでも女神様とやらが別世界で死んだ人間をこの世界に召喚するんだとか。
そして転生者というのは"特典"と呼ばれる固有の能力を持っているらしい。
「バルック兄貴は凄ぇんだぜ!前の世界でも馬鹿な仲間がドジ踏んじまった時、すぐに助けてくれる頼れる兄貴分なんだ!」
スキンヘッドの大柄な男の方がデカい声で言った。
「おいよせドースキン、いい加減お前は落ち着きというものを持て」
「すまないな、騒がしい阿呆な弟分で」
「え?あ、あぁ、別に気にしてないから平気だ」
「……こんな弟分だがな、力は人一倍あって行動は実直な信頼できる奴なんだよ」
オールバック…バルックという男が俺に話しかけた。
この2人は前世からの付き合いで、兄弟分だったらしい。
騒がしい大男がドースキンでそれを制する男がバルック。
反りが合わなそうな対極的な2人だが、
お互いの仲はそこそこ良好な様だ。
それから暫くはドースキンが前世やこの世界でのバルックの自慢話を捲し立て、
その度にバルックが宥めた。
これだけなら酒場にいる冒険者達もうんざりしそうだが、
2人ともかなりの実力者なようだ。
俺や周りの冒険者すら挑まない危険な依頼で見た珍しいモンスターや特異な環境、
モンスターから採れる希少素材や特殊な環境下でないと見つからない物質など
俺達の興味を引き立てる話題を数多く持ち合わせており、
酒場を沸き立てた。
それから数時間後
「騒がせて悪かったな。ここの酒場の連中はドースキンの話に耳を傾けてくれるし、中々気の良い奴らだよ」
「いや、俺の方こそあんたらの自慢……冒険譚を山程聞けて参考になったぜ」
「兄貴〜、あにぎは凄ェんだぜ〜、普通の奴とは格ってのが違ぇんだぜー……」
「あぁ分かった分かった、俺は凄いしお前はもっと凄い奴だドースキン」
周りの連中の殆どが酔い潰れた頃になり、
泥酔状態のドースキンをあまり酔ってないバルックが付き添いながら酒場を後にした。
しかし面白い二人組だったな。
実力は言うまでもなさそうだが、自慢話を聞いた限りでは
相反する性格なのに戦う時はしっかり連携が取れてる様だし
何より一番お互いの事をちゃんと認め合ってる。
まるで生まれた時から2人でひとつって感じだった。
別世界にはあんな奴等がまだまだいるんだろうな。
俺もあんな全幅の信頼を置けるパーティメンバーに会いたいぜ!
「兄貴〜、兄貴は凄いや兄貴ー」
「まったく……騒がしい事を除けばお前は誰より優秀な奴だよドースキン」
──女神の神殿──
「……残念ながらあなたは死んでしまいまし、これから異世界で第二の人生を歩んで頂きます」
「肉体を下界に構築しましたので、それがあなたの魂の器となります」
今日もまた転生者にする予定の魂を私の神殿に呼び寄せた。
平凡な魂にいつも通り特典という名の飾り付けをして
死出の旅に送り出すつもりだったのだが
「異世界!異世界だってよ!俺ワクワクしてきたぜ兄貴ィ‼︎」
「騒ぐなドースキン、女神の前でくらい口を慎め」
「でもよ兄貴、異世界だぜ異世界!退屈だった前の世界には無い冒険が待ってるんだぜェ!」
「すまない……こんな騒がしい弟分で」
凄いのが来たな。
どうやら前世では紛争地帯で傭兵をしていたらしい。
前世でそれなりに経験豊富なのならこちらの世界での活躍にも期待出来そうだ。
だが、
「いえ……それは構わないのですが、その……ひとつ気になる事が」
ひとつ、どうしても気になる事があった。
「ん?どうした女神殿?何か聞きたい事があるならなんでも聞いてくれ」
「おうよ!何でも答えるぜ!」
なぜ、この男は
「なぜあなたは先程からひとりで大騒ぎしているのですか?」
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