【単話完結】ファンタジーっぽいものを書くだけ

堅牢烏

【第1話】有償転生者10連ガチャ

私は転生を司る女神。

別世界で死んだ魂を此方の世界に転生させる役割を担っている。

その際に常人が持ち得ない能力や物品、"転生特典"を付与する。

今回は取り敢えず10名程転生させよう。


まずは1人目、死因は交通事故か。

玉座の前に呼び出されて辺りをキョロキョロ見回す魂に

「生まれ変わって剣と魔法の世界で色々と頑張れ」

という簡単な状況説明。


次に転生者の器となる肉体を下界に構築。

そして此方の世界の言語を理解出来る様にする。

インストールする言語は大陸の中央にある国の公用語でいいだろう。

そして最後に"転生特典"の付与、これが肝だ。

女神である私の力を微量ながら削って人知を超えた力を発現させる。


この者に与えるのはそうだな、"猛毒を操る力"と"その毒に対する耐性"を……


「ギュプルッッ!!!?」

「あっ」


死んだ、転生者の肉体が爆ぜた。

というか肉体だけじゃなく魂も粉微塵と化した。

……うーん、何が駄目だったんだ?

体の中に移植した猛毒を分泌する毒袋から毒が漏れた?

それか毒袋を移植した事による拒絶反応?

若しくはダークドラゴンすら侵す猛毒が魂を傷つけて自滅?

理由は色々考えられるが、次行こう次。


2人目、死因は首吊り。

さっさと状況説明して肉体構築、そして特典付与、

この者には"無限の筋力"と"無限の頑強さ"を与えよう。


「ゔ⁉︎ヴグググゥゥブプゥッッッ⁉︎………ドジュヌッ」

「あっ」


また駄目だ。

今度は特典そのものはちゃんと付与出来たのだが、

下界に送り出してから数秒後に肉体がめちゃくちゃに捻れて自壊。

さっきと違って原因は大体分かる。

多分"無限の筋力"は与えられてたのだが、

"無限の頑強さ"が与えられてなかったんだろう。

若しくは頑強さが"無限"でなく"有限"だったか。

上手いこと転生出来れば怪力の英雄として名を馳せただろうに勿体無い。

よし次だ次。


3人目、死因は病死。

先程の2人の尊い犠牲者から得た経験も踏まえて、

今回は"赤子に転生"させよう

下界に産まれる予定の赤子の中に魂を移す。

これのメリットは成長する過程で少しずつ、安定して能力を発現させられる事だ。

成長し切った肉体をパパッと創って、そこにパパッと魂と特典を入れ込むと

さっきみたいに拒絶反応や自壊を引き起こす。

何事も横着は良くないな、気長に行こう気長に。

特典は"動物と会話、操る能力"、よし出荷!



……結論から言うと失敗、また死んだ。

無事に産まれて、ちょっとずつ能力に目覚めていたのだ。

しかし、生後5歳くらいで熊に引き裂かれて無惨な有様に。

どうやら"動物と会話"の能力はだいぶ使えてきてた様だが、

"動物を操る能力"の方が目覚めるにはもう少し時間が必要だったらしい。

少女の姿になって再び私の前に戻っきた3人目が泣き言や恨み言を言ってるが、

私に言われても困る。

恨むなら熊を恨んで欲しい。

とはいえまだ気力の方は充分残ってる様なので、

もう一度下界に送り出そう。

二度目の転生は私の力の消費がカサ増しするからあまりやりたくないが、

異世界での立ち回りや自身の能力の扱い方の触りの部分は身に付いてる様だし

このまま使い回すか。



……無事10名転生させきったが、結果はあまり芳しくない。

4、6人目は第二の生を謳歌する前に爆散。

5、7、8人目は特典をショボめにして何とか下界に降り立たせる事に成功したが、

野盗やモンスターに対抗出来ず死亡。

9人目は"鋼鉄に匹敵する頑強さ"というそこそこ良さげな特典を獲得して無事に転生。

ただ、本人が冒険だのファンタジーだのに

乗り気じゃない消極的な性格なのが少し残念。

10人目はもう面倒くさいから能力の方向性をこちらで決めず、

ランダム生成(実はこれが一番私の力の消費が少ない)した結果、

"身体を虹色に輝かせる"というよく分からない特典を獲得。

赤子からの転生にしてたし、まだ能力を調整出来ず常時虹色だったから

忌み子か何かと思われて殺されるだろうと諦観してたが、

両親が物好きだったのか、無事成長したみたいだ。


ひとまず仕事は終了した。

一眠りして消費した力の回復に努めるとしよう。




そしたらまた"転生"の再開だ。

寝てる間に面白い能力でも考えておこう。

次は何にしようか……

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