発覚と関係の復活

「それでなんで俺を呼び出したんですか?」


 俺は次の日休日にまた有栖先輩に呼び出されていた。

 一度だけという約束を破ってきてしまった俺も俺なわけだが。


「えっと、その……」

「俺はあの時、一度だけと言ったはずです」


 それ以上は大智に親友に対しての裏切りになるから。

 浮気を咎めようとしていた側がそうなっては、ミイラ取りがミイラになる状態だ。


「違うの! 今回はデートとかそういうのじゃなくて、ただお話をしたくて」

「それこそ大智とするべきなんじゃないんですか? 俺なんかじゃなくて」

「大智君の話なんだよ。私、周りにこんな相談できる人を前に颯斗君から言われた時に探してみたんだよね」 

「学園のアイドルって言われてるぐらいなんですから1人ぐらいいるでしょう。前はぼっちだなんだと言ってましたけど」


 そんな俺の回答に有栖先輩は静かに首を振る。


「いなかったんだよ。私には信頼してもいいなと思える友達すら」


 有栖先輩はどうやら本当に孤高のアイドルだったらしい。

 でも普通に考えたらそうかもしれない。

 よってくる男は美貌に釣られ、中身を見ずによってくる女はその群がる男と仲良くなりたいだけ。


「じゃあ有栖先輩は俺のことは少しは信用してもいいって思ってくれているんですね?」

「まあそうだね。颯斗君の打算は友達の為、だったでしょ? 私としてはその時点で信頼に足るよ」


 よかった。普通に有栖先輩にアタックしていたら玉砕していたらしい。

 いや、今はそんな話よりも有栖先輩だ。


「それが聞けて安心しました。実は俺、有栖先輩に嫌われてるのかと思っていたので」

「なんでそうなるの? 私、何かしちゃってた?」

「何もしてないので大丈夫です。それで大智の話ってなんですか?」

「それが浮気の証拠じゃないけど尻尾を掴んじゃったかもしれないの」


 まさか本当にあの後、1人で調査をしているとは思いもしなかった。

 しかも尻尾を掴んだということは大智が浮気をしているということだ。


「颯斗君?」

「ああいえ、すいません。まさか本当にしているとは思っても見なかったもので」

「そうだよね。私も最初は目を疑ったよ」

「それでどんな証拠なんですか?」


 ここで有栖先輩が出してくる証拠が弱ければまだ確定じゃなく、大智にも弁明の余地があるかもしれない。


「これ……」


 控えめに差し出されたスマホには一枚の写真が写っていた。

 大智がバイト先の従業員出入口で女の子と抱き合ってキスをしている写真だ。


「こ、これ本当ですか?」

「本当も何も私が直接とってきたんだもん」

「今すぐ大智に連絡を……」


 スマホを取り出し大智に電話をかけようとしたところで有栖先輩から待ったがかかる。


「ちょっと待って。私にいい考えがあるの」

「でもこれ今すぐに本人に問い詰めて聞かないとといけないレベルですよ!」

「だからそう焦らないで。最大限の仕返しを考えてるから。颯斗君」


 普段より力のこもった有栖先輩の視線に俺は思わずたじろぐ。

 何か覚悟を決めたという表情だ。

 ならばここは誠実に対応するべきだろう。


「なんでしょうか?」

「私ともう一度、浮気の関係をしてくれませんか?」


 正直意外な提案だった。

 一度は俺が一方的に終わらせてしまった関係だ。

 それを有栖先輩の方からだなんて。


「大智の浮気とどう結びつくか伺っても?」

「勿論いいよ。私は私を弄んだことに対して復讐がしたい。だけど普通に問い詰めても、それで終わりになっちゃう」

「それじゃだめなんですか?」

「ダメだね。やるなら徹底的にが、小鳥ヶ丘家の家訓なの。なら初めから私と颯斗君は恋人だったってことにして、大智君とは遊びだったってことにした方がダメージがありそうじゃないかな? って」

「だから浮気なんですね。ただそれだと俺が仲介したのに辻褄が合わなくないですか? 自分の彼女を紹介したことになりますよ」

「そこは安心して。壮大なエピソードを用意してあるから」


 有栖先輩がそこまでいうのなら大丈夫なのだろう。

 少し抜けていて少しポンコツだが、やる時はやる人だ。


「それじゃあ明日の放課後から作戦開始ね」


 そんな言葉と共に俺と有栖先輩の復讐劇が始まった。



—————

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