第7話 レッツフィッシング①

 釣りたて新鮮魚を食べたいと暴れ出したタマのために私は。


「マイケルさん、この町に良い釣り場ってありますか?」


 数時間ぶりに町長夫妻が経営する食堂へやってきていた。


「釣り場?」

「はい。この子が、タマが魚を食べたいと言って・・・・・・」

『にゃ~』

「まあ、可愛い猫ちゃん♪」


 私の肩に乗っている(猫神の力でメチャクチャ軽くして乗ってる)タマをマリアさんが撫でる。

 タマはデレデレになりながらもっと撫でてと猫撫で声を出す。

 うわ~、コイツ、美人に弱いタイプだ。


「猫? どうしたんだコイツ?」

「家の近くに鳴いているのを見つけて拾ったんです」


 バカ正直に家の中にいつの間にか居た自称猫神と話せば、何を言ってるんだコイツになるので言わない、絶対に。

 それにタマの言葉を理解出来るのは私だけみたい。


『にゃ~。お姉にゃん。そこをもっと撫でてくれにゃ~』

「うふふ。可愛い♪ 此処を撫でて欲しいの?」

『う~ん。違う場所だけど全然OKにゃ~♡』


 マリアさんに撫でられて非常にデレデレした声を出しているタマのやり取りを見る限り、マリアさん達にはタマの声が聞こえてないのが解る。

 どうして? という疑問は沸くがそれは後にして、今は釣り場を教えてもらわないと。


「そうか、拾ったのか。だが生魚じゃなくて猫用フードの方が良いんじゃないのか? 雑貨屋に売ってるぞ?」

「いや、そうしたいんですけどお金が心許なくて~・・・・・・」

「そうか、それなら仕方ないな。明日から嬢ちゃんにも出来る仕事を探してやろう」

「あ、ありがとうございます!!」


 上手い理由が浮かばなくてお金を理由にしたらありがたい事を言われた!!

 本当に色々とお世話してくれて・・・・・・、おかげさまで私の家出ライフは明るいです!!


『おい! 何を勝手に話を進めてる!! ワガハイは釣れたて新鮮魚しか食わんぞ!! 猫用フードなんぞ猫神であるワガハイのご飯ではないにゃ!!』


 チッ!! この自称猫神め!!

 優しさを噛みしめている所に水差しやがって!!


「ん? どうした猫ちゃん? 腹減ったのか?」

『違うにゃ!! 腹は減ってるがワガハイは怒ってるのにゃ!!』

「今から猫用フードを買ってきてやるから安心しろ」

『おい!! 聞いてるのか!! この髭マッチョ!! フードではなく魚!! 新鮮生魚にゃ!!』


 頭を撫でようとするマイケルさんを威嚇するタマ。

 そんなにフードは嫌か・・・・・・。

 此処は説得した方が良いのかな?

 タマを。


「ねえ、この子はフードじゃなくて魚を食べたいんじゃないのかしら?」


 お~っと! ここでマリアさんがタマに加勢した~!!


「マリア、解るのか?」

「幼い頃に飼ってた子がフードじゃなくて魚しか食べない子が居たのよ。

 その子ね、フードって言ったらすっごく嫌そうにあらしふく子だったの。今のこの子の反応が同じだったからもしかしてと思ってね」

『さすが美人のお姉にゃん!! ワガハイのこと解ってるぅ~♪』


 ここぞとばかりにタマの奴、マリアさんの顔面すりすりしおって。

 うう、これは腹くくって釣りをするしかない!!


「マイケルさん! マリアさんの言うとおりだと思います!」


 私がトドメと言わんばかりに言うとマイケルさんはそれなら仕方ないと言って釣り場へ案内してくれる事になった。


『これぞ猫神の力にゃ!!』

「違うと思う」

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