第6話 自称猫神
『何度も言っておるだろう!! ワガハイの名はタマエル・ローラン・フォーリンラブ・・・・・・』
「略してタマね、タマで良いでしょう」
『くぅ~!!!!!!』
今、とっても疲れている。家に入って安堵から一気に疲れが出たというわけじゃない。
原因は今、私の目の前に居る、ムッチリ? モッチリ? 体型の三毛猫柄の自称猫神のせいだ。
――数時間前。
「え? ワガハイの家?」
『そうにゃ! 此処は猫神であるワガハイの家にゃ!? 何しに来た!!』
フーとテーブルの上で威嚇をしてくるモッチリ体型の喋る猫。
私は白昼夢を見ているのかと思って、頬を抓る。痛い。これは夢じゃない。
いや、普通にこれは夢でしょ!? あれ? そしたら、私の家でも夢に? それだけは嫌だ!!
『おい! 何を黙っている!! 此処はワガハイの家にゃ!! 用がないなら出て行け!!』
「出て行け!? いや、この家は私のお祖母様が私のために残してくれた家よ!! どうして出て行かなきゃいけないの!?」
『え? そうにゃの?』
「そうよ。私が来るまで管理してくれた人から鍵も貰ってるわ」
ほらと鍵を見せると喋る猫は鍵を見つめ。
『え? え? 出て行くのはワガハイの方?』
「そうなるわね」
『にゃ~~~~~~!!!!!! それは嫌にゃ~~~~~~!!!!!!』
暴れ出した。
体を丸くさせ、ボール状になるとアッチコッチに飛び跳ねる!!
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと!! 落ち着いて!!!!!!」
『みゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
幸い窓ガラスを割ることはなかったけど、暴れ回るのを待つまで私は逃げ続け。
暴れ回った喋る猫は疲れたにゃ~・・・・・・とその場でパタリと倒れた事により嵐は過ぎ去った。
今は落ち着いた自称猫神と話をしている。
今後についてじっくりと話をしたいのに何度も何度も自分の本来の名前、すっごく長い名前を私に言わせようとしてくるので疲労がピークに達しそうになった私は遮ってタマと呼ぶ事にした。
「で、タマ。貴方はこれからどうするの?」
『にゃ?』
「この家に住むの? それとも出て行くの? 私はどっちでも良いけど」
『それってワガハイが此処に住むって言えば了承してくれるって事かにゃ?』
「うん。貴方を追い出して住むのは余り良い気持ちじゃないしね」
この家はお祖母様が私のために残してくれた家なだけで追い出すとは一言も言っていない。
出て行くの方は自分の方と言ったから、そうなるわねと返しただけ。
それに無理矢理追い出しでもしたら、また丸くなって暴れ出しそうだしね。
そんな本音を隠して、どうするの? とまた尋ねたらタマは目を輝かせ。
『住む!! ワガハイは此処に住むぞ!!』
ピョンピョンと飛び跳ねた。
お腹の肉が凄くタプンタプンと揺れているのが目に入る。
触ったら気持ちよさそうなそれを触りたいけど嫌がられそうだから止めておこう。
嬉しそうな姿に思い切って住むか聞いて良かったと思う。
それに家出したとはいえ、やっぱり一人暮らしというのはちょっと寂しい。
人間一人、猫一匹も生活も悪くないと思うしね。
――お祖母様、ちょっと? どころじゃない凄く変わった喋る猫と暮らすことになりました。
心の中で天国にいるお祖母様に報告していたら。
『クンクン。お前から良い匂い、魚の匂いがするにゃ』
「此処に来る前に魚のパイ包み食べたからね」
『にゃに!? ずるいにゃ!! ワガハイも魚を食べたいにゃ!! 新鮮な釣りたて魚を食べたいにゃ~!!』
今度はゴロゴロと転がり回るタマを見て。
――やっぱ、一緒に暮らすのを考えようかな。
と思った。
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