第3話 家出した後の屋敷の人々の反応

 半狂乱になりながらやってきたイザベラを宥め、何とかメアリーがいなくなった事を聞き出した執事長は足早で主人、現ローリエ家の当主、ダニエル・ローリエの元へ向かいメアリーがいなくなった事を伝えた、が。


「そうか。だが、ステファニーに関係ない事だ」


 という一言が返されただけだった。


「だ、旦那様、それは・・・・・・」

「娘一人が急にいなくなった事ぐらいでステファニーに関係はない」

「ですが、メアリー様失踪が世に知られればただ事ではすみません!!」

「くどい!! あの娘が居なくなったぐらいでステファニーに関係ないと言ってるだろう!!

 さて、そろそろステファニーの着替えが終わった頃だろう。それ以上、その話をしたらお前をクビにするぞ。まあ、あの娘に関して何か聞かれたら病気で寝込んでいると言えば良い」


 顔を青ざめ立ち尽くしている執事長に目もくれずダニエルはステファニーの部屋へと向かう。

 執事長はそんなダニエルに本当に変わられてしまったと嘆いた。


 その頃のイザベラはメアリー失踪のショックでフラフラしながら歩いていた。


「・・・・・・メアリーお嬢様。何処にいらっしゃるの?」

「あら? メアリーのメイドじゃない。こんな所で何をしているの?」


 高圧的な声色にイザベラはすぐに誰か解った。


「奥様、メロディーお嬢様。おはようございます」


 メアリーの実母、アンジェリカ。その彼女の横には自身に似ているからと非常に溺愛しているメアリーの双子の妹・メロディーがニコニコと笑っていた。

 内心、嫌な奴に会ったと思いながらもイザベラはかしこまった様子で挨拶をする。


「ふん。挨拶だけは一人前ね。それに反してメロディーが仕えるメイド達は優秀な事! 見なさい!! 今日のメロディー!!」


 今日のお茶会に参加するにあたってメロディーはアンジェリカ好みの衣装、豪華絢爛な衣装に身を包んでいた。

 それを見たイザベラは口を開けて見つめていた、豪華絢爛に着飾ったメロディーに見とれているのではない。

 呆れているのだ。

 今回のお茶会の主役はステファニーだ。主役以上に着飾るのは余り宜しくない。

 貴族なら誰もが知っている暗黙の了解。

 イザベラはアンジェリカとメロディーの後ろに控えているメイド達を見る、皆、目が死んでいた。

 きっと、アンジェリカがまた無理を押し通したに違いないとイザベラはアンジェリカから優秀と褒められたメイド達を憐れんだ。


「ところでメアリーはどうしたの? もしかして寝坊? 本当に私に似て美しいメロディーよりも劣ってる子ね!!」


 メアリーを侮辱する言葉に怒りを感じながらもいつもならメアリーの事なんて気にしないのにと思いながら、今、メアリーが失踪した事を伝えた。


「はっ・・・・・・? 居なくなった?」

「はい。いつものように部屋に行ったらもぬけの殻で・・・・・・。旦那様には執事長が伝えに行きました」

「え? 嘘でしょ? 居なくなった?」


 メアリーが失踪したと知って動揺するアンジェリカにイザベラは感激した、普段はメロディーばかり気にかけているけど内心はメアリーの事も気にかけているのだと。

 だが、その気持ちは次の瞬間に砕かれる。


「居なくなったですって!? 王子を誘惑しろって言ったのに!! あのバカ娘!!」


 アンジェリカの発言にその場にいた者達は固まった。

 メロディーだけは相変わらずニコニコと笑っている。


「ステファニー、私より美しいと言われて天狗になっているあの小娘に泥を塗れと言ったのに!! 本当に使えない子!!」


 イザベラはアンジェリカを信じられないと言った表情を向けるが怒りで我を失っているアンジェリカは気付かない。


「今日のお茶会、私とメロディーは欠席するわ!! 王子を取られてショックを受けるあの女の顔が見れると思ったのに・・・・・・」


 ブツブツと言いながら去って行くアンジェリカとメロディー、後ろに控えていたメイド達は二人を追いかけることなく固まったまま。

 異様な空気が流れる中、イザベラはメアリーが居なくなったのはアンジェリカが関係しているのではと考えるのであった。

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