第三問『宝石』
また、真っ白の部屋だ。
そして、今度はテーブルの上に封筒が二つ。
「兄ちゃん、読めるのは片方だけやで?」
赤と青。エシュは両方の表面を指でなぞる。骨の下で唇がひきつく。
「赤は兄ちゃんの寿命、青は死因や」
「フッ」
「なんや?」
「いや?」
「なんやねん!」
エシュはチップのデーモンを指で転がす。
「なあ、封筒の中身は読んだのか?」
「うーーげーーーー知らへんてーーーーやめーーやーーーー」
やめた。
「いや、知っといても教えてやらんけどな?」
「だろうとは思ったよ」
「教えん教えん! おし、行けーん!」
時が止まる。
チップのデーモンはドアを光らせる。早く行けということだろう。気付き、エシュははっとした。チップもその様子を察する。
「「はっはっはっはっはっは!」」
「兄ちゃんには、ちっと難しかったかな?」
「波長が合わない」
ズバリ言われて悪魔は声を潜めてしまった。
「しかし、まぁ……」
気にした様子も無く、エシュは両方の封筒を持ち上げる。
「意外と薄いな」
「? そりゃ、寿命と死因やかんな。ペラ紙ひとつで十分やろ」
その言葉を聞いて、エシュは青い封筒を置いた。手に持つのは赤い封筒、『寿命』が記された方の封を開ける。なるほど、確かにペラ紙一枚のみだった。
「なんやなんや? 何書かれてたん?」
エシュは紙切れをぺらぺら振った。
『寿命:1942年6月21日12時00分03秒』
「……はい? なんなん、これ?」
「ここに書いていることは確実に真実なのか?」
「いんや?」
チップのデーモンが悪びれなく言った。
「正答率は80%や」
「先に言え」
「聞かれてへんもーん!」
ふざけた調子のチップに文句一つ言わない。それどころか、傭兵はどこか満足そうだった。
エシュは『寿命のドア』を開く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます