第一問『二択迷宮』

――――あなたは、この迷宮に『挑戦者』として先に進みますか?


 二メートル近い男の巨体は、それでも肉体以上の威圧感が凝縮されていた。

 麻の布を巻きつけた肉体の筋肉。動物の頭蓋を顔に被せる不気味さ。そして、右手に持つ自身の身長に匹敵する鋼鉄の棍。見た目からも相当な重量であることが推し測られたが、男は軽々しく肩に担いでいた。


「⋯⋯⋯⋯」


 エシュは傭兵だ。副業で傭兵をしている。

 戦場のトリックススターと称される程の実力者。彼に届く依頼は荒事が大半だった。素性の知れない彼へコンタクトを取るのは簡単ではない。傭兵エシュに依頼を持ち掛けられる相手というのは、その大きなふるいに残ったばかりだ。


「⋯⋯⋯⋯」


 今回も、きっとそういった手合いの相手なのだろう。顔も声も知らない、文書のみのやり取り。高くもなく低くもない報酬。警戒心が強いのはお互い様で、故に信用に足る。

 エシュは迷宮の入り口に手を掛ける。

 危機感。生命の危機を直感する。開かない方が良い。そして、開かない方が遥かにマズい。数秒の逡巡、エシュは言う。


「答えは『YES』だ」

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