第7話 22分で事件は起きる
興奮冷め無い状態で学校に登校し、ユキとマミに今朝の報告をした。
名前はヒロくん。
そして乗り換えは環状線。
新たなビックな情報に気持ちを踊らしているのは私だけで、それを聞いた二人は、
「で?」
とあくまでも冷静だった。
「環状線で乗り換えたって、環状線の駅っていくつあると思ってる?」
マミの問い掛けに、環状線の数を頭の中で数えてみた。
「数えなくていいから」
ユキに突っ込まれる。
「まぁ、でも、収穫は収獲だよね」
ユキがそう言ってくれて、沈みそうだった気持ちがまた浮上。
「この話聞いて思ったんだけど、私らも七桜の家にお泊りしたら、ヒロくんの顔を拝めるんじゃない?」
マミの発案にユキとマミが顔を見合わせて頷き合う。
「えっ、ちょっと待って!」
お泊りは楽しそうだけど…
「二人ともヒロくんに何もしない!?」
私の心配を問い掛けると二人はニヤニヤした。
「そりゃ、あの手この手で接近する作戦を決行するよね〜」
「手ぶらでは帰らないよね〜」
恐ろし過ぎる二人の企みに、私は全力で首を横に振る。
「絶対ダメ!」
「だっていつまで経っても進行しないじゃん」
マミの言葉に私は、
「明日こそ絶対に話し掛ける!」
力強く宣言した。
翌日、意気込んで迎えた。
ホームに入ってきた電車に、ヒロくんの姿を確認し、電車に乗り込む。
心臓のドキドキが半端ない。
人の波を交わしながら、何とか彼の横に安定して扉は閉まり、電車は発車する。
右隣に彼は立っていて、彼の腕が私の肩に当たっていた。
前に立つサラリーマンの肩にも、後ろに立つサラリーマンのお腹にも、反対側の横に立つOLさんの腕にも当たってるけど、彼と触れ合ってる部分が特に意識してしまう。
心臓がバクバクしていて、それが聞こえてしまうんじゃないかって心配になるくらいだった。
でも、ユキやマミの顔が頭を過り、この前のお礼を言おうと顔を上げた瞬間、ハッと気付いた。
この密集した空間で発した言葉は、周りの人全員に聞こえてしまう。
その気付きが私の言葉を詰まらせた。
だけど上げた顔はバッチリと彼と目が合ってしまった。
思わず慌てて下を向いた。
心拍がまた上昇する。
変な行動過ぎる。
恥ずかしい。
やり直したい。
絶対変な子だって思われた…。
後悔したところで時間は戻らない。
私はチラッと横目でゆっくり彼を見上げる。
彼はこちらを見ていなかった。
よかった。
よかったのか?
気にもされてないってことかもしれない。
真っ直ぐ前を見つめている彼。
耳にはブラックのワイヤレスイヤホンが収まっている。
それに気付いた私は、声を掛けたところで聞こえなかっただろうと思った。
声を発さなくてよかったと安堵していると、カーブで多少車内が揺れた。
車内の揺れで若干立ち位置の変動が起こる。
真横に立っていた彼が若干後ろにずれ、私は後ろのサラリーマンに押されるように前のめりにになった。
その時は特に彼と少し離れてしまったくらいの感じだったけど、途中で違和感を感じた。
車内に入ってから後ろのサラリーマンのお腹が背中からお尻のラインに当たっていたけれど、特に意識はしていなかった。
でも、おかしい気がする。
めちゃくちゃ密着してない?
さっきまで頭の中はヒロくんと話すことでいっぱいだったはずなのに、一気に頭の中が真っ白になった。
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