第5話 空振りの反省会

ユキ*会えた?

マミ*どんな感じ!?

ユキ*いる?いない?

マミ*見つけたら話しかけるんだよ!

ユキ*そうそう!話し掛けて名前を聞け!


車内で振動し続けていたのは、ユキとマミから来るLINE だった。

話し掛けなんてもちろん出来なかったし、名前なんて聞けるわけなかった。

登校してそれを二人に話したら、死んだ魚みたいな目で見られた。

「…ご、ごめんなさい」

二人の表情に思わず謝った。

今日は一限目から実習室で、施術台を挟み一対二の図で座って話した。

「小学生じゃないんだからさ。22分間背中見つめてたって…逆にコワいから」

ユキには呆れられ、

「なんで会釈した時に言葉を発しなかったの?あっちも会釈したってことは少なくとも七桜だってわかってのことだよね?」

マミには質問を投げ掛けられる。

「満員電車半端ないのよ。乗車率150%超えなんだよ?毎日必死!!」

私の言い訳に二人は首を横に振る。

そして二人は顔を見合わせた。

「私、私大に通う友達に聞いたんだけど、まだ私大だと夏休みの学校も多いみたい」

「えっ?そうなの?」

「なんか、9月末まで休みなんだって。でも市大とか国公立は半ばまでが夏休みらしくて、もう授業はじまってるって」

「あっ、じゃぁ、そっち系ってこと?」

「大学生だったらね。私らみたいに専門学生かもしれないし、予備校生とかも有り得ない?」

「有り得る!ヤバいね、七桜の情報だけじゃ特定無理だ」

二人は私を前に散々話を繰り広げてから私を見た。

「いい?このままじゃ、何も進展しないよ」

ユキが言った。

「七桜が見てるだけでいいとかなら別にいいんだけどね」

マミがフォローしてくれる。

「見てるだけ…」

言われた言葉を唱えてみた。

今朝の彼の背中、目が合って会釈した時、昨日助けてくれた時、全部の鼓動を思い出す。

はじめて自分に芽生えた気持ちを、ただの傍観で終わらせたくない。

「…話してみたい」

それは心からの気持ちだった。

「明日は話し掛けてみるっ」

二人に宣言した。




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