第2話 初恋かもしれない

「七桜、おはよう」

教室に入ると、友だちで同じクラスのユキとマミが私に席から手を振ってくれた。

前から3番目の壁際の並び席がいつもの席だった。

自由に座っていいけれど、毎日何となくみんな同じ場所に座っている。

私は二人の元へ歩く。

「聞いてよ、七桜。ユキが彼氏とペアリング買ったんだって〜」

マミが私に教えてくれる。

「安いのだよ。でも来月の1年記念日に間に合うように注文してきたんだ」

ユキには高校の時から付き合っている同い年の彼氏が居る。

マミも付き合って3ヶ月の年上の彼氏が居る。

いつもなら大好物の恋バナなのに…。

「どうした、七桜?」

反応のない私に、マミが問い掛けた。

倒れ込むようにユキとマミの間の席に座り、

「ごめん、話聞きたいんだけど…胸が…」

辿々しく言いながら、胸に手を当てる。

「何?具合悪いの?」

「胸?むかつき?食べ過ぎたの?」

ユキとマミは口々に問い掛ける。

「ごめん…先に…自分の話ししていい…?」

息切れしたように二人に問い掛ける。

二人は心配そうに私を覗き込む。

「勿論いいよ、話しなよ」

「どしたの?大丈夫?」

心配そうに問い掛ける二人の顔を交互に見て、

「私…恋したかも…」

思い切ってカミングアウトする。

一瞬、二人はフリーズ。

他のクラスメイトの話し声や笑い声、スマホの着信音等が聞こえる。

「えっ!?」

二人は大きな声で、合図があったわけでもないのに同じタイミングで声を発した。

「誰に!?」

「いつ!?」

矢継ぎ早に質問される。

「昨日は普通だったよね!?」

「あれか!?バイト先!?」

「いや、違うよ。バイト先はスーパーのレジ打ちでおばちゃんばっかりって話てたじゃん」

「じゃ、お客さん?」

「スーパーの?」

二人は私が話す空きのないまま話を進めていく。

「中学の同級生とか?」

「恋したことないって言ってたじゃん」

「えっ、じゃぁ、誰?」

一通り二人で会話してから二人は真ん中に座る私を見た。

「…名前も歳もわかんない」

やっと発した私の言葉に二人は私を見たまま首を傾げる。

「…王子様みたいだった」

両手を口元に当てて言うと、二人の眉間にシワが寄る。

「夢?」

「幻?」

二人の問い掛けに首を横に振り否定した。

「現実」

私はそう言って、今朝満員電車で起きた話をした。


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