第509話 終焉の始まり
ダルフのフランベルジュより滾った閃光は、鴉紋の身をも刻んで苦痛に呻かせる。空へと突き上げられる形で天空へと連れ去られていく鴉紋であったが、恐ろしき激情の相がダルフの勢いを断ち切った――
「フンがァっっ!!」
「ぅ――!!?」
火花を上げて弾かれたフランベルジュ。次の瞬間に、天剣を受けて裂傷した黒の腕が、怯む事も無くダルフの襟首を引っ掴んだ――
「ジィィイイアァァアア゛――ッッ!!!」
「――――がッ!!?!」
宙にもつれ合った十二と十二の翼――滾り合う明滅の最中に構わず、鴉紋は中空にて強引にダルフの首を引きずり、超速度の落下に連れ去りながら大地に叩き付けた――!
ひたすらに無機質なる砂の丘に、豪快な砂の柱が舞い上がる。
「ゥ……あ――――っ」
「お前が嫌いなんだよおおあッ!! ダルフゥウウ!!!」
陥没した大地に沈み込みながら、そのままダルフへと馬乗りとなって憤怒の乱打を始める鴉紋――
「苛つくんだ!! てめぇを見ていると、馬鹿な幻想を描いてた、あの頃の自分を見つめているかの様で!!」
砂塵打ち上がった不明瞭な景色の中で、拳を打ち付けるもの凄い轟音が大地を揺らす。
だがしかし――
「なのにてめぇは! 何度でも何度でも俺の前に――」
「『雷炎ノ《ヴォルフレイム》|…………」
「ア――――!!!」
「
「グゥぃっ……ァガガ、ガ――――っ!!」
打ち上がる炎雷が砂塵を晴れ渡らせると。灼熱と電光の螺旋に燃え盛った鴉紋は呻き、後退させられていた。
「ぅううう……はァァァッ!!」
絡み付く雷火を
しかし胸に刻まれたフランベルジュの一閃は、黒き肌を切り裂き、赤々とした血液を溢れ出させていた。
「おもしれぇ……!」
明確なる傷を負った自分を改めて視認しながら、鴉紋は煙を吐きつけながらダルフへと踏み出して来た。
「……」
口の端より垂れた血液を腕で拭ったダルフが、背の翼を躍動させて鴉紋を睨め付ける。
すると漆黒は、敵意の全てを堂々受け付けながら、チラリとその牙を覗かせていった。
「分かっているぞダルフ……」
「……」
「お前の体から『不死』が抜け落ちている事を! あと一度、もう一度貴様を殺せば全部終いだ」
ゴキゴキと鳴った獄魔の蠢く指。暴虐的なる波動を前に、ダルフは生白い首をゴキンと鳴らせ、精悍なる態度で持って視線をお繰り返す。
「喚くな鴉紋、もうお前とは嫌という程に語り尽くした、そして理解している。お前との論争は延々平行線だと……」
「ククッ……ならばどうするダルフ」
煌めいた冥府の闇と天界の光明……それぞれの眼光が向かい合い、闘争の予感に
「より強き者が、覇権を握る!!」
「そうだ、分かって来たじゃねかダルフ! どっちが正しいなんてねぇ、どっちも正しいんだ! だから最後に物を言うのが、純粋なる“力”なんだよ!!」
メギドの丘にて繰り広がるこの闘争が、人類の明暗を分かつ
「がァァァラァアアッ!! くたばりやがれ死に損ないがぁああ!!!」
「数え切れない程お前に敗北し続けてきた。だが最後に一度、この一度だけ!! 人々が混沌に喘ぎ苦しまない為に!! 俺はお前に勝利するぞ、鴉紋ッ!!!」
漆黒と純白が捻じくれ絡み合い、邪悪と正義が牙を剥き合う。激しき雷轟に風は荒び、炎雷の渦が黒の嵐をかき混ぜていく――
「オオオオオオオオオオオオオオオオ――ッッ!!」
「ハァァァアァアアアアアア――ッッ!!」
光と闇のひしめき合った空で……
彼ら二人の
そして、空は捻れて鳴き始める――
思えば両者共、何処か
『ぁぁ…………ぁぁぁ、あ…………』
この世界にはもう、自ら達を超える生物など存在しまいと……
『『ぁぁあ……ぁぁあああ、ああああ……』』
失念していたのかも知れない。
『『『あああああああ、あああああああああ、ああああああああ』』』
この世界を
――
『『『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』』』
3重に共鳴する天からの声は、天地創造その時以来の……
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