第288話 空を這う四枚の雷火
音を立てる雷轟。空を奔放に這う白き雷火。決意を固めた男の背より、白熱のエネルギーが空に
「――んッ!?」
空へと飛翔したダルフ。彼は背に生えた四枚もの出力を駆使し、宙を鋭敏に駆け回って目前の男を撹乱していく。
「くだらん児戯だぁぁ」
白き閃光を空に残して直角に駆け巡る男を、ヘルヴィムは目で追う事も辞めて前だけを見据えた。
「ハァアア!!」
「くだらんッッ児戯だぁァァァ!!!」
上空より飛来したダルフを、大槌が捉えて弾き飛ばした。
「――――ぅぐう!」
辛うじて腕で防御したダルフであったが、一撃で骨を砕かれていた。だが再びに腕を再生すると、即座に手元より一筋の稲光を放っていく。
「――フンヌゥアアッ!!」
「くそ……!」
銀に輝く聖十字が雷光を叩き落とす。そしてヘルヴィムの眼光に射竦められたダルフは、中距離のままに雷弾を連射し始めた。
「そんな体で……っどうしてそこまで闘える!?」
鬱陶しそうに雷を叩き落としていたヘルヴィムであったが、連撃の最中で、突如怒号を上げて気迫を解き放った。
「俺の頭上ヲッ!! チョロチョロチョロチョロ飛んでんじゃねぇえええ!!」
不可思議な力に、迫り行く閃光がかき消されていた。そしてスータンの前を開いたヘルヴィムは、懐から二本の釘を取り出し――ブン投げる!
「チョコザイんだよぉおおおお!!!」
フルスイングで投げ放たれた
そしてヘルヴィムによる短い詠唱が、神聖なる釘にさらなる力を灯していった。
「その聖なる力でぇ
「ぁが――――ッ!!」
ダルフの肩と足に被弾した釘は、尚も止まらずに侵入した体内を駆け上り、やがては彼の心臓を貫いて空へと突き抜けていた――
拍動は無慈悲に止まり、翼を無くしたダルフが墜落していく。
「――――ッ」
白目を剥いた彼であったが、地に激突する寸での所で蘇生を果たし、再びに噴出した四枚の稲光で空へと舞い戻る。
「ぐぅう……っ」
心臓に残った痛みに胸を抑えたダルフは地に降り立った。奇怪な軌道で追い回して来るあの聖遺物の前では、空に居る事は必ずしも得策では無い。
「その力ぁ、何を代償に行使しているのか、忘れた訳ではあるまいなぁぁ……」
「……っ」
「貴様は喰われているのだぁ……貪り喰われているのだぁあッ……神の供物の様にぃ、その無限の刻をぉ」
――『不死』その能力による際限無き再生は、ダルフの中に流れる筈であった、
「老いても死ぬ事の出来ぬお前はぁ、やがて意識を保つだけの
「――構わない!! それでみんなを守れるのなら!」
「なぁぁにを言っているぅ……そうして無闇に力を消費していたらぁ、すぐにお前は、眼下で虐げられる子どもに手を差し伸ばす事も出来なくなるって言うのによぉぉ……エエッ!! 言うってのによぉおお!!」
迅雷の如きスピードで飛来して来たダルフの拳を、巨大な聖十字が阻む――
そして振り抜かれた大槌に後退したダルフは、やがて四枚の稲光を空に破裂させる。拡散する正義の眼光が、神罰代行人を真っ直ぐに捉えていた。
「みんなを守る……ロチアートを、人間を! その為に終夜鴉紋を討ち滅ぼす! その時まで保てば良いッ!!」
「クフゥフフフゥ、ガッハハハ……なぁぁらばダルフゥ」
ひとしきり笑ったヘルヴィムは、強烈に破顔したまま聖十字を地に突き立てると、でろんと舌を出して、親指を地に向けていく。
「手に馴染む杖は見付けたかぁ? 茶をすする為のティーセットはぁ、チェスを打つ友達はぁ、チビッた時の替えのパンツはぁぁ……?」
「く……」
「……ここで哀れなジジィになっていけぇ」
「また俺をおちょくっているつもりか?」
「違うなぁ……貴様の
勢い良く聖十字を取ったヘルヴィムの背から、ダルフは灼熱の様な波動を感じる。
「ホォザァンナァァァアアアアアア!!!」
「負けるものかッこんな所で!!」
雷火煌めきその背を押して、ダルフもまた、
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