第26話 13時26分

2049年12月21日 火曜日 13時26分 東京都狛江市 某所


 ピーンポーン……


「はい……お疲れ様です!お待ちしてましたよ、入ってください」


 横沢が待機している部屋に、行田が手配した応援が2名到着したのだ。


「木村さん、末松さん、さっそく向かう準備をしましょう。反対側のマンションに、容疑者がいます」


 応援の2名は強く頷く。横沢はそれを確認し、一度取り外していた拳銃を再び身に付けていると、机に置いていた携帯電話が鳴った。


「はい、横沢です……行田さん、今応援が到着したので、これから猿田の部屋へ向かいます」

『横沢さん、少し待っていただけませんか』

「え、なぜです?」

『今、里井さんから連絡があって、可能性の話ではありましたが、猿田のことを狙っているのは犯人グループ以外にもいるのではないかと、むしろ我々警察の動きを見ながら虎視眈々と機を伺っている可能性もあると。これから管理官に、一帯を封鎖できるよう掛け合います。そうすれば、安全に確保できるはずです』

「行田さん、仮にそうなら、尚更悠長に待ってられないですよ!確保するだけで……」


 横沢は言葉を失った。重い振動を感じ振り向くと、応援にきた木村と末松がうつ伏せで横たわっているのだ。さらに目線を上げると、そこには見知らぬ白人の姿が視界に入る。


「何だお前……いつの間に部屋に入った……」


 横沢は自身の置かれた状況を把握しきれていない。恐怖に声が強張る。


『横沢さん?どうしました?』

「……ちょっと取り込み中なんで、すみません、いったん切ります」


 横沢はそう言うと、電話を床に投げ捨てる。


「お前、何者だ……」


 白人はゆっくりと横沢に近づく。横沢は、じりじりと後ろへ下がる。懐から拳銃を取り出そうとした瞬間だった。

 ゴンッ、という鈍い音とともに、横沢は崩れ落ちた。後ろにもう一名、白人の仲間がいたのだ。殴られた後頭部から鮮血が流れ出る。


「ローラン、他に警察はいないようです」


 流暢なロシア語だ。


「わかった、傍受は続けてくれ。……なるほど、ここから猿田が見えるのか。他に排除すべき人間がいないなら、さっそく行こうか」

「はい……あ、待ってください。今、傍受している捜査官が別の捜査官に電話している……こっちへ向かっているみたいです」

「なら邪魔者が来る前に、急いで片付けようか」

「けど、見る限りあの部屋に荷物はなさそうですね」

「それは本人に、教えてもらうとしよう」


 二人は部屋を出て、正面にあるウィークリーマンションへ向かっていった。部屋に残された警官3人は、誰一人、倒れたまま動くことはなかった。









 

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