第15話 2049年12月21日 火曜日 7時55分

2049年12月21日 火曜日 7時55分 東京都千代田区 日比谷公園内


 今日も日比谷公園内にはのどかな時間が流れている。颯爽と公園内を歩く男は、いつもの場所で、いつものカフェオレを注文する。カフェ・アルファ。元軍人である日系アメリカ人、マイケル佐藤が経営する移動式販売のカフェだ。日曜日以外、ここ日比谷公園で営業しており、本格的なコーヒーが飲めることでファンは多い。


「マイケル、おはよう」

「おはよう、孝太郎。一昨日ぶりか」


 カフェオレを受け取るといつもの、販売車の横にある席に座るはずが、先約がいるようなのでその前の席に仕方なく座った。


「神妙な顔をしているじゃないか」


 マイケルは、カフェオレを啜る里井に向かって、言った。里井はもう一口、喉に通してから、それに答える。


「・・・なあマイケル。一つ頼みがあるんだけど」

「その顔には理由があるわけか。孝太郎の頼みは、基本的にロクなものじゃないからな・・・さて、聞いてから考えようか」


 そう言うとマイケルは、里井の対面にある椅子に腰を下ろした。


「ダボス・リーカーって、知ってるか」


 里井がそう言うと、マイケルは自分で入れたコーヒーを、味わうように飲みながら、答えた。

 

「知ってるも何も。俺は一度、奴をアレストし損ねてる。CIAの時にな。・・・なるほど、SII絡みか?」


 マイケルはSIIのことを知っている。ただし、知っていることは、。マイケルは、里井が高校生の時から彼を知っており、里井が絶対の信頼を置く人物の一人と言えるだろう。


「ああ。潜入することになったんだ。彼に接触する必要がある」

「それは褒められたことではないな。詳しくは聞かないことにするが・・・奴には、最大の用心をするべきだ」

「マイケルがそう言うと、妙に説得力あるな。聞きたいのは、効果的な手土産、何か知らないかってことなんだけど。何も持たずに会うわけにもいかないからな」

「ないことはない。それを用意しろと?」

「ああ。頼むよ、マイケル」


 里井がそう言うと、マイケルは立ち上がった。コーヒーを求めるお客がやってきたからだ。


「・・・わかった。手土産は用意してやる。毎日のカフェオレ代だけじゃ、割りに合わない仕事だがな。特別に、だ。それはいつ必要なんだ?」

「まだ決まってないけど、近々の話になるかな。場合によっては、今すぐにでも必要になる」

「分かった、何とかしよう。ただし、用意まで一日もらうぞ。それと孝太郎、SIIの連中も分かっているとは思うが、リーカーは特殊だ。非常に危険な人物だぞ。孝太郎なら問題ないだろうが、それでもできる限りの用心していくんだ。それだけは、約束しろ」


 マイケルがそう言うと、里井もカフェオレを飲み干し、立ち上がった。


「約束するよ」


 マイケルは頷くと「明日同じ時間に来い」と言い残し、販売車の中へ入っていった。里井はそれを見届けてから、販売車に背を向け歩き出した。

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