第十五章 邪教
第一話 噂
都
都で噂があった、邪教に手を染めた集団がいるらしい、そういう噂だった。
なんでも目立つ格好をしておらず、一般市民に交じっているそういうものらしかった。
そこに付けて、この都に鵺塚というものがあるのだそうである。
鵺を封印した、塚だそうである。
それを邪教集団が狙っている、そんな噂だった。
◇
溜まり場
「この噂は厄介だな、一般人に交じっているのか。だが姫からの指示がない限り動けんな」と吹雪さんが難しそうな顔でいう。
「探偵社の方では、動けないのでしょうか?」と麻美さんがいった。
「事件や依頼が無いと、不自然だ」と吹雪さんが答えを返した。
まだ、美空さんたちは来ていない。
時間は、十六時半になったところだ。
「ほおっては置けませんね、ですがどうすればいいのでしょうか?」と私は話した。
「学生を危険な目に合わせられないから、単独独自で動くのは無しだぞ」と吹雪さんから注意をもらってしまった。
私らしくない、まるで紅葉のようだ。
だがその当の紅葉は、何の噂か分からないようだった。
◇
溜まり場 美空・に組の皆
「……ということなんだが、何か噂を掴んではいないか?」と吹雪さんから問われた。
「私のほうでは、そういう噂はあまり流れて来ないので分かりません」と私は答えた。
「むしろ鵺塚のほうが、気になります。本当に、鵺が封じられているのでしょうか?」と逆に聞き返した。
鵺はこの前、一匹倒したところであるからだ。
そんなにたくさんの鵺がいるなどという話は信じないわけでは無いが、私的には昔の鵺が封じられているのではないだろうかと思っただけであった。
だが、封じられているということは倒せなかったということの表れでもあり危険度は必然と高くなるのである。
いつの時代の鵺かは分からないが、危険物であるということに変わりは無かった。
「そっちの方の噂はからっきしだな、どこにあるのかも皆目見当がつかん」と吹雪さんはいった。
そこで話は、一旦区切られた。
◇
警察署 吹雪・京志郎警部
「噂で悪いんだが、鵺塚の場所か、邪教集団のアジトを知らないか? 一応念のため、通報が来てないか確認しに来たんだが」と私は波賀警部に聞いてみた。
「警部が暇ではないのは分かっているんだが、ほおって置けなくてね……。ウチの若いやつらが、聞き込みに行ってしまいそうだったのでな」と追加でいっておいた。
「若いやつらというのは、探偵助手や探偵をしておられる方のことですか?」と波賀警部は聞いてきた。
「いや、そっちの若いやつじゃない。に組の薫が突っ走りそうだったんで、止めたんだ」と探偵社のものでないことを示唆した。
「らしくないですね、彼女はもっとこう一線置いているような達観した見方をするように思えるのですが……」と波賀警部はいった。
「確かに、らしくない。邪教を広める輩というものに、憤りを感じているのかもな」と私は答えた。
「ですがその話は、こちらには挙がって来てないですね。逮捕者でも出れば、事態は進展するのかもしれませんが。邪教の狂信者かもしれないで、逮捕する訳にも行かないもので……」と波賀警部は語尾を濁した。
「怪しい動きをしているものが居れば、職質はかけて見ましょう。現状ではそれくらいしか、手の打ちようがありません」と追加でそういった。
「分かった、忙しいところをすまなかった」と私はいって、帰ることにした。
事実これ以上話しても、解決の糸口が見えてこないからである。
◇
女学院に行くと私の取り巻きのうち一人が、朝から来ていなかった。
どうしたのか聞いてみると、どうも急に調子が悪くなって休んだらしい。
朝一緒に通学してきている子からの話であるため、信頼性の確かな話である。
帰りに見舞いに行くという話があったため、それに同行することにした。
まさかこれが、例の邪教集団に通じるものとは分からなかったのだ。
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