第七話 面倒事

 羅生門付近団子茶屋裏 薫・紅葉


「あっちは片付けた」と紅葉の声が背後から聞こえた。


「大丈夫だったでしょう?」と着物を着慣れていない人にそういった。


「ええ、でもあなた方に迷惑が……」と、いって来るが「ここまで来たら、あんまり変わらないわ。安全なところまで送るけど、どこが安全?」と逆に聞く。


「白根医院なら、かくまってくれると思う」と、いうので「ではそこまで行きましょうか」というと手を差し出した。


「足は大丈夫? 捻ってない?」と聞いて「大丈夫」という返答をもらったので白根医院に向けて歩き出した。



 風祭探偵社 吹雪・麻美あさみ


「よし、南を重点的に当たるぞ、今日は私も出る、いやな予感は当たるからな。今日は大雲残れ」といった。


「所長、探すなら僕も」と、いうが「お前が一番、乱闘に向いてない」とはっきり言って、沈黙させた。


「鷹津風君は七条を中心に、秋山さんは八条、我々は九条を当る、七条と八条が終わり次第九条外を」というと、皆で一斉に南に向かった。



 御霊神宮/お札所 みこと


 今日は嫌な予感がするのじゃ、何か起きそうなのじゃと思うのじゃが、どこにというのは美空ほど詳しくでないのじゃ。


 それにお役目もある、自由にならないのはいかん、その代わり今日は美空が休暇じゃ、羨ましいのう。



 九条大路と道祖大路の交差点 美空


 確かこの辺りで嫌な予感が、一本内側か!


 信濃小路と馬代小路! 確かに嫌な感覚がする、近い。


 今日は素手だが行ける!


 ん? 九条大路側か!



 信濃小路と馬代小路 薫・紅葉・美空・女性


 もう、小路に入ったとたん何なのよ、この有象無象はっ、妖魔あやかしの群れかっと思ったとたん空が薄紫に変わった。


 これは『隔離世』! 美空さんが、近くに!


「紅葉! 全開!」といって私は女性をカバーするだけで手いっぱいだ。


「オウ!」と一気に紅葉が妖魔の群れを蹴散らした。


 その後を女性の手を引いて一気に走る。


 だが、すぐにデカいのがいて、紅葉でも一撃では難しいらしい。


 直後『怒雷』が駆けた。


 デカいのが怯む、駆けたところに道が出来上がる、そのすぐ後ろを、町娘風の美空さんが走っていく。


 デカいのが斬り倒される、多分『神符斬魔』だろう。


 道が開けたので、紅葉が前進し始めた、私もその後に付いて行く。


 美空さんが、駆けるに従って『隔離世』が、付いて行く、凄い!



 九条大路と野寺小路の交差点 吹雪・麻美


「あっちだ! 木辻大路の辺りか!?」と、私はいって走る、麻美も付いてくる。


 麻美も持久力はあるのか、この程度では根を上げない、頼もしい限りだ。



 白根医院 前 美空・に組の皆(みことのぞく)・女性


 大小の有象無象がひしめく、薫さんが手を引く、女性の顔面は蒼白だ。


 その子を求めて抗っているわけではなさそうだが、うっとおしいことこの上ないので、『怒雷』を数発撃ち込んで、白根医院前を駆逐する。


 だが数は多い、吹雪さんと麻美さんが合流してくれたので、女性のガードは任せていられるが、この数はなんともしがたい。


 白根医院はこの時代風に、大きい病院といっても、差し支えない規模の医院だ。


 だがこの有象無象がすべてを台無しにしている、『穢れ祓え』を打って自身の周囲の穢れを吹き飛ばし、綺麗な空間を作る。


 私は『怒雷』の大きいのを打ちかました。


 その瞬間群れていた、有象無象が消し飛んだ。


 有象無象はもういない、静寂が結界内を満たした。


「もう大丈夫でしょう、皆武器は閉まって下さいね」と私がいって、医院の裏の広場に行く、みんなを連れ添って。


 そこで『隔離世』を正式に解いた。


 だがそこに見も知らない男性が出刃包丁を持っていた、私は身構える。


「何者ですか!」と声を打つ。


「魔女はコロス!」というと突きかかってきた、私はコレでも古武術の皆伝を持っている。


「ハッ」と息を吐くと、突きを捌きながら、男を叩き伏せた。


「グッ」と男は動こうとするが、すでに私に極められているので、動けない。


「左衛門」とガードされていた女性が、男の名を叫んだ。


 だが呼ばれた当の男は、そんな名前知らんといったふうで、名前に反応すらしない。


 

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