第三話 お仕置き

 御霊神宮/参道/隔離世内 美空


「息が上がっておいででしてよ、お婆様」と静かに冷たい口調で告げる。


 さっきの攻撃は霊力に力を乗せたもの、みことちゃんに振るおうとした力と同質のもの。


 当たると力を最悪持っていかれる、という分析を私はした。


 『霊視』と『黄泉透し』も一瞬実行する。


 だがそっちには反応が無かった、どうやらそれ以外の力のようだ。


 じりじりと下がるお婆様。


 だが逃してやらない。


 私は参道から位置を変えていない。


「貴方は配下が、同じことをされて黙って見過ごせるのですか? 見過ごせるのだとしたら、相当薄情なのですね?」と静かな冷たい口調のまま聞いた


「クッ、ワシなら十倍返しじゃ!」といってはっと息をのむ、がもう遅い、自ら白状したのだ。


「では、私の十倍返し、受けていただけますよね」といって、向きを静かに変えて、正面に捉える。


 本来なら、私が固定した気配の元に飛んで行く術なので、向きは関係ないが、敢えてそうすることで、追い落としと他の効果を狙っているのだ。


「何をすれば許すんじゃ」といって来た。


「貴方なら許しますか?」というと絶句した、私は泣いても謝っても許す気は無いが、どうやら相手も同じらしい。


「ならどうするかお判りでしょう? 貴方は虎の尾を踏んだのですよ、ただで帰れるとお思いですか?」と、私が最後通告をした。


 『怒雷!』と『天足』と唱えた、雷がお婆様を包んで引き裂いた。


 直後、真上からお婆様が、降って来るが、『神符斬魔』を解き放つだけで、ことは足りた。


 真っ二つになった、私はその位置からすでに『天足』で動いていてそこには影しか残していないのだ。


 ぼしゃっといい音を立てて、身代わりが落ちて来た。


 『神符霊陣』と自身を中心とする結界を再定義した。


 袖から、もう二枚神符を引き抜いた。


 気配を察知する、この中で私から逃げられる方法はない。


 気配を掴んだ、『神符霊縛』と放つ、私から少し離れているところを飛んでいるようだ、だが捕らえた。


 そのまま、高度に制限をかけていく、どうやら杖で飛んでいるらしい。


 これが舶来の魔女というものらしい。


 『穢れ祓い』と唱えた、私を中心とした十メートルの程度の範囲から、穢れが消し飛んだ。


 目を向く魔女! もう私と同じ高度、つまり背丈と同じところまで、押し潰されてきている。


 私は笑顔だ、ただ眼は笑ってないが。


 何かをわめく魔女だが私は許さない、霊縛がかかっている中で口を動かせるだけ大したものだが。


『声が出ていませんよ、お婆様』と口パクで伝えてやる。


 目を向いた、だがそういうものなのだ。


 ついでに『呪壊』と唱えて呪いを破壊した。


 さらに目を丸くした成す術無しとはこのことだが、私は後ろに立つものも捉えているため。


「子の喧嘩に親ですか?」と静かに後ろに問うた。


「なぜバレた」と、いうので「貴方が、私の十倍返しをもらってくれてもいいのですけど?」と聞いた。


「よく今まで隠れていましたね?」と聞き直した。


「異物は、直ぐにわかるのです」と追加でいった。


 長身、百七十はあるだろう背の高い女だった。


「そいつを離す気は?」と問うのだ。


「貴方なら配下を痛めつけられて、ただで返しますか?」と問うた。


「ないな」と答える。


「交渉は決裂ですね」と私が笑顔になった。


 そいつが跳躍して五メートルほど後ろに飛び下がった。


 私も、懐に手を突っ込んで、御神刀を抜いた。


 そいつも大振りのナイフを抜いている。


 数度打ち合わせる。


 火花は散る。


 御神刀としての力はこちらの方が強そうだ。


 腕力は若干向こうの方が上だろう。




「援軍が来ました、私の勝ちです」といい切ってその場から『神符斬魔』と二発唱えた。


 一発は真後ろに飛んだ、避けようがない一撃である。


 だがその刃を盾にしたようだった、刃の壊れる“バキュッ”という音がする、もう一発も直ぐに飛来する、“バリッ”という音がして何かと拮抗させたようだった。

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