第二話 攻撃?

 御霊神宮/お札所 みこと


「すみません、男避けってありますか」といきなり聞かれた。


「厄除けならあるが、そういうものは無いのじゃ」とわらわはその女子おなごに答えを返した。


 その女子はよわい二十くらいで抜けるように白い肌で、黒い長い髪の女子じゃった。


 魅了的かどうかは、美空よりは劣るじゃろう、といったくらいかの。


 ただ、普通の気配は持っていなかったのだ、どちらかといえば老婆の気配がした。


 若い者のそれではない、気配は正直じゃと思った直後攻撃されそうになったのじゃが、未遂に終わった「そこで、ウチの巫女に何をなさるつもりですの、お婆様」と美空がいつになく破壊力を増した笑みでそういったのじゃった。


「お婆様ですって?」とそ奴はいうが気配はすでに割れておる。


「ウチの巫女に手を出すようであれば、私がお相手いたしましょう」と美空がいつにない攻撃的なようすで、一歩詰めた。


 そ奴は怖気おじけづいたのか、一歩一歩下がっていく。


 美空は逆に一歩一歩と詰めていく。


 まるで、相手の間合いが分かるといったように、そして美空が袖に手を突っ込んだ。


 そ奴は、そのまま逃げ去った。


「今の者の身なりを、長へ通達、気配も一緒に」とお仕事を預かってしまったのじゃ。


 わらわは、その場を後にして長の元に向かったのじゃった。



 御霊神宮/参道 美空


 私は気配を追っていた、誤魔化されて無ければ、ここであっているはずだ。


「そこの巫女、待ちなさい!」と声をかけた。


 びくりとした様子で、こちらを向こうとしない様子に声をかけた「お婆様、もうお追いかけっこは、ああ、お年でしょうから、御無理をいうのは良くないですね?」と。


 すでに、周囲から人気が無くなっている、のをいいことに、私は神符を六枚袖から取り出した。


 そして、その巫女が、こちらを向くと同時に、霊力と思われるのを放ってきた。


 私は目を離さず冷静に気配読みも常同しながら軽く右に避けた。


 ついでに『隔離世』を展開し、例外を私以外の“に組の皆”に適用する。


「堪えきれなくなって攻撃とは、もういい逃れはできませんね!」と力強くいい切った。


 長なら、この神宮内の領域で、どこに隔離世が展開されたかを察するのは、直ぐだ。


 その巫女は巫女ではなくなっていた、紫の衣をまといし、先の曲がった杖持つ、禍々しい何かである。


 背丈は老人のそれである。


「なぜわかった!」といって来たので「その程度の変装では、バラして、歩いているようなものでしょうに」と静かに答えた。


「しかも、私に喧嘩を売りたいご様子、買って差し上げましょう。『神符斬魔』」といって『神符斬魔』を刀のように符にまとわせた。


「そなた、何者じゃ」と聞くので「私はこの神宮の巫女頭、この領域下で勝手は許しません」とはっきりと、違う答えをいっておいた。


 相手がいいたいことは分かるが、直にバラスのは無しである。


 だからここは、私の領域だ、ということを主張する意味で、いっておく。


「クッ、なんじゃと、領域が解けぬ、フン、フンッ」と杖を振るが、何も起きない。


 いや、すでに変化は起きている、それに気が付かないだけなのだ。


「くすくす」と私は敢えて声を少し出して笑う。


「何かありましたか、お婆様?」と聞き返してやる。


 まさかと思ったのかこちらを見返してくる、そしていうのだ「まさかお主、結界を張ったのか!?」と。


 そして私が聞き返した「逃げられると思ったのですか? ウチの巫女に仕掛けておきながら?」と、はっきりとした冷たい口調で問うた。


「女学院の実らぬ実を、実らせたのも、貴方の仕業ですね」とついでに問うた。


「クッ、舐めておったのが、ここまでとは、今はお主と争う気はない、結界を解け!」と宣うのだ。


「自社の巫女に、暴力を振るわれて置いて、はいそうですかで、あなたは済ますのですか?」といいながら『神符斬魔』の刃を伸長させる。


「痛い目を見ていただきましょう」としっかりというと一歩一歩と近付いて行く。


 相手は逃げる場所がないか、あちこちを見るが、隔離世に穴などない。


 そしてあと数歩というところで留める、そこまで行かずとも届くのだ。


 最初の位置からで十分届くともいうが。


 相手を逃がすことはしない、そういう意味で近付いただけなのだ。


 相手も仕込み刃を、抜いたようだった。


「持っているではありませんか、そのようなものを持って我が社に来よう等とは、元々押し込み強盗でもするつもりでしたか? お婆様」と静かな口調で聞きながら、私は視線を外さない。


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