第三話 向う見ず

 溜まり場 美空・に組の皆・お婆様


 本日の構成は私が前衛にいるため、スリートップ、ワンミドル、ワンバックである。


 お婆様も結界内にいるため、さらにもうワンバック追加されてしまうが、最後列であるため問題は無いように思えた。


 あろうことか、そのお婆様を最初に獅子が狙ったので、私が瞬時に位置を移動して、逆に獅子の片側の首を跳ね飛ばす、といった状況となった。


「貴様何者!」と女がいうが答えてやらない。


「名乗ってすらいない、貴様に名乗る名などない!」と切り返しながら、さらに獅子に傷をつけに行く。


「クッ、戻れオルトロス」といって、獅子を手持ちに戻すが、そうは問屋が卸してやらない。


『怒雷!』といって、聖なる雷を二匹に集約させる。


「貴様! 距離は関係ないのか!」というが答えず、『神符斬魔』を三体に飛ばす、獅子二体と女である。


 こちらの味方を盾に取った、と思ったのだろう、相手に笑みがこぼれる。


 『神符斬魔』は魔を斬るためのものであって、普通の人間や味方には効果が、無いのだ。


 そのまま獅子と女に『神符斬魔』が飛んだ。


「ぎぃやぁぁっぁぁぁぁー!」と女の口から断末魔の悲鳴が漏れる。


 女は壮絶な笑みを漏らしながら、「これだけ叫んだのだ、今頃外は人であふれているだろう、お前らは終わりだ!」というので、吹雪さんがモーゼルを轟と撃ちかけた、狙い違わず、女の右の肩を撃ち抜く「ぎゃぁぁぁぁ!」と叫ぶ女。


 吹雪さんが静かにいった「この結界の中でいくら騒ごうとも、外に音は何も漏れないのさ! 大人しくあの世へ逝け」といいながらもう一発轟と撃った。


 今度は獅子が主人を守ったようだった。


「なんだと、わが師は結界とはいえ、音だけは外に漏れるのだと……」といった。


 吹雪さんが余裕の笑みで答えた「その師は何もわかっちゃいないってことだな」といってさらに轟轟轟、と三連撃ちした。


「結界すべてが同じ特性などというのは、素人の回答だな」といって女の額を射程に捉えた。


 間に獅子が割って入る。


 前衛の二人が獅子に打ちかかった、動ける獅子は一匹、もう一匹は先の私との戦闘で、戦闘不能にまでに追い込まれている。


 女を守るものはもういない、「降伏すれば私たちは命を助けたとしても、警察の判断で死刑かな? まあ、お前はやりすぎた! どんな理由があるにせよ、人の命を軽々しく奪っていいものでは無い。 しかも、獅子を連れ歩いて、見えた者から殺すなど言語道断!!」と吹雪さんは少々怒っておいでのようだった。


 私はお婆様を守りながらの戦闘だ、そんなに無理はできない。


 今日はまだ『神符霊縛』や『神符霊陣』を使ってない。


 余裕ありありなのだ。


 現在の構成は、ツートップ、ツーセンター、ワンバックである。


 女にはもう余裕がないかに見えた、事実である。


 だが最後に隠し玉を持っていたらしい、「我が権能を全て捧げます、怒れる大神よここに!」といって女は、最後に何かわけのわからぬものに、化けたのだった。


 要するに自身を贄として、何かに捧げ、何かを召喚したというのが正しかろう。


 『神符霊縛』、『神符霊陣』と同時に唱えた


 その後私も前衛に加わって、触手を斬り飛ばし、腕と思しき触手も斬り飛ばし、爪と思しきものと斬り結んだ。


 その後十分ほど剣戟が続いた、終わったころには、胴しか残らなくなった何かと私たちだけであった。


 その後その何かに止めを刺し、といっても止めを刺したのは、紅葉さんのオーラの乗った拳であり、そいつは壁に叩きつけられてあぶくになって消えたのであった。


 獅子二匹は、名乗ったうえで、操られていた申し訳ないと謝ったので、傷をいやし元あるべき場所に帰ってもらった。


 その獅子の名はケルベロスとオルトロスといったが、どこの神話体系に属するのか良く分らなかった。


 その後は、いつも通りとなってしまった、恒例の牛鍋屋へのコースとなった。



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