第二話 囲み

 とある辻


 ここまでくれば、もう大丈夫だろう。


 もう散々撒いたのだからと思った。


 だが、そうは問屋が卸さないらしい。


 視線の先に獣を連れた女がいた、思わず悲鳴を上げる、夜に響き渡る。


 だが誰も来ない。


 辻からいつの間にか出られなくなっていた。


 そして顔の二つある獣が嗾けられ、さらに叫び声を上げるだけ上げたが、誰も来ず。


 そして、獣に喰われるがままに果てた。



 とある辻 京志郎警部


「これが昨日襲われたものですか?」と、聞くと鑑識さんが「確かにコレが昨日襲われたものです」と答えてくれた。


 この辻に住んでいたものたちには、昨日夜八時頃に悲鳴と絶叫が聞こえていたらしいが、誰も辻に入ることは叶わず、中で何が起こっていたかまでは分からないらしい。


 詳しい検分は署でしますのでそれを待ってください。


 といわれたので仕方なく待つことにして、聞き込みに入った。


 とはいえ先ほど聞き込みに回った時以上のものは無く空振りに終わったのである。



 鳳高等女学院 薫


 件の教師が、今日はお休みだった。


 休みの理由も判然としなかった。


 他の教師に聞いても、はっきりとした答えは帰って来なかった。


 おかしい、とは思ったが、そこまで深く調べるものでは無い。



 風祭探偵社 吹雪


 今週は動きが無いな、警察署のほうも犠牲者はあったが、この前と変わらなかった。


 と思っていた時だった。


「所長、例の件の目撃者出ました。三頭の頭を持つ獅子を見かけたとのことです、昨日事件のあった場所の近辺で目撃されています」と秋山さんが飛び込んできた。


 ウチでは閑古鳥は鳴かないが、犠牲者の中に依頼人が含まれていると別なのだ。


「どの辺だって!」といいながら、都の地図を広げた。


 今回すでに犠牲者の二人が、ウチの探偵社に依頼をしていたところだったのだ。


 犠牲者の裏取はしてあるが、なぜ襲われるのか、襲われる理由がさっぱり分からないので、あった。


 襲われている犠牲者に共通点は全くなく、警察でもなぜそうなったのか、理解できなかったのだ。



御霊神宮 美空


 鳥が羽ばたく音が背後で聞こえた、左から後ろに向くと、真っ白い鳩が銀の通信筒を付けて飛んできていた。


 そして私の左肩に留まる、鳩の胸を右の手で突くと“くるっぽー”といって左足の通信筒を見せて来た、これはいつものヤツかと思い、通信筒を開けて中の文を読みだした。


 重大なことが書かれてあったのだが、問題はそこでは無かった、取り急ぎ社務所に向かい長に緊急である旨を告げ、みことちゃんも出してもらうようにいうと、私は溜まり場に急いだ。


 私は溜まり場の前で軽く舞い『隔離世』を展開し、その中に踊り込んだ、踊り込んですぐに銅鏡を触り、緋色の鎧武者となり大業物を抱えて、お婆様を索敵した。


 直ぐに見つかりはしたが、瀕死の重体であったため即治療を施した、気が付いたお婆様に吹雪さんを呼んでもらうようにいうと、その先にいる二頭の獣を連れた女に向きなおった。


 そしていう「我らを襲うとは国を敵に回したいのか?」と。


 女は薄笑いを張り付かせたままのたまうた「盟治の世が安全? どこが?」といったのだ。


 私は問うた「国家反逆罪で捕らえられたいのか?」と。


「私は神出鬼没、私を捉えられることなぞ、ありはせん」とのたまう。


 そして直ぐに二人が来た、みことちゃんと、吹雪さんだ。


 多勢に分勢化、今日はお暇するとしようといって隔離世を通り抜けようとして、その壁にぶつかる。


 そこにさらに増援が、二人来た、薫さんと紅葉さんだ。


「博物教師、阿連話あれわ美恵みえ! 神妙に縛につきなさい!」と薫さんが叫んだ。


 やはり博物の教師らしい。


「だれぞ! この壁を張ったのは!」とこちらのいうことを全て無視するので、「答えてやる必要はない」と静かにいう。


「神出鬼没が笑わせる! 出れないのでは、神出鬼没とはいえないな!」といいながら吹雪さんが、モーゼルC96を抜いた。


 こちらは全員が戦闘態勢に入るべく! 得物を全て抜き切った。

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