第三話 証拠集め

 警察署 吹雪


 盟治の世になって呪いといえないために、警察は苦労しているようだった。


 検死だけで限りなく黒に近い灰色、その他の項目も合わせるなら完全に黒である。


 ただ物証は出ない、それが問題のようであった、警察にとって物証が出ないと動きにくいことこの上ないのだ。


 後は根も葉もない噂を、信用するか否かである。


 呪いと仮定すると、噂があった、ただ信用はおけない部類の口伝えの噂であるため、今まで信用できなかったのだ。


「実は調べていくうちに、辻屋台のものが、線に浮かんだのですが、神出鬼没であるため、線が追えないのです」といった。


「そいつは何の容疑だ? それによっては引っ張れるのではないか?」と、私は聞いた。


「呪いを売り歩く容疑……、なんていえませんよね。まだ証拠はないのですが、二人ほどからそいつから呪いを買ったという、証言が得られています。警察沙汰になってしまったのを、恐れての口利きだと思うのですが、呪いを打ったものではなく、それを買ったのを見たという証言ですので証拠不十分です。で売り子がいるのではないか? という内容になっているのですが」と複雑な内容を波賀はが警部は語ってくれた。


「ずいぶん遠回りである話だな、それだけでは私たちも動けないな、姫からの指令があったとしても動きにくいな。もう少し詳しい事情が分かれば動けるだろうが」と、私は答え「で現在までの死者は何人なのだ?」と聞く。


「今日までに四十二人です」と答えてくれた。


「多いな、こちらで把握していた数の倍以上だな、確かに呪いが売り歩かれていないと、無理な量だな。一人で呪うには多すぎる」と私はいった。


「売り子が押さえられれば、それが一番なのだが、多分辻売りなのだろう」とつぶやくに留めた。



 鳳高等女学院 薫


 噂話が聞こえて来た、私を疎ましがっていた、ものの一人が流行りの馬車の事故で、なくなったそうであると。


 私にも取り巻きは居るが、情報収集中なのか、私の周囲には来ていなかった。


 授業が始まり、分かったことが二つ、明らかに私を疎ましがっていたものが、二名来ていない。


 もう一つは、教師の様子がただ事ではない、ということだった。


 私の取り巻きは、特に何事もないといったふうで、しっかりと来ている。


 呪詛を昨日、一昨日おとといで二つほど返したので、多分それじゃないかなと思われるのだ。


 あのクラスの呪詛で、人が死ぬのは、よほど油断していた時だけ、だと思うわけだ。


 ただ、普通の人間には辛いと思う。



 御霊神宮/社務所前 美空


 私は長と話していた、その話の中で気になった点があった。


 この前、黒い犬が見えると話していた人、が亡くなったということ、とそれが馬車の事故であるということであった。


 お祓いをしてなくなるというのは、かなり重症だったということに他ならない。


 この場合の重症というのは、呪いに捕らわれている場合を指し示す。


 権宮司の腕が悪いわけではない、キッチリとお祓いが行われたにもかかわらず、祓われなかったということは、呪いのほうが進行していた、ということなのだろう。


 私が術を使って払えば、どうなるか分からないが、術でなく儀式で祓えないというのは、余程物事が進行しているということなのだろう。


 特に口封じとかではなく、そういう事件になってしまったよ、という事後報告であった。


 他にも二三話をしたが、そこまで深刻なものは無かった。



 溜まり場 美空・に組の皆


「とりあえず、今日警察署に行ってきた。大分ややこしそうだったな、特に目立ったのは、呪いの売り子というものがいるらしい、担ぎ屋台で出回っているらしいんだが、法則性が見つからないらしくてな、で探し回っているそうだ」と吹雪さんがいった。


「私のほうは、この前ウチにお祓いに来た方が、馬車の事故で亡くなったそうなのです」と私は報告した。


「私のほうでは、呪詛に当たったと思しき学生が、流行りの馬車の事故に有ったり、倒れ伏していて学校に来てなかったわ」と薫さんはいう。


「わらわは特に収穫はなしじゃ」と、みことちゃんがいって。


「アタシんところも特に、変わったことはなかったな」と紅葉さんがいって報告会そのものは終わった。


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