第三話 火炎の壺

 警察の保管所 美空/に組の皆・京志郎警部・鳩


 私の一撃は、確実に大壺を捉えていた。


 『神鳴』が直撃した。


 微動だにしない壺だからかもしれない、だが動きそうな気配があるのだ。


 前衛二人が接敵する、薫さんは剣を伸ばし突き込みにいった。


 また紅葉さんは拳にオーラをまとわせ、思いっ切り殴りに行った。


 二人の攻撃が当たれば、流石に倒れるだろうと思われたがビクともしない。


 炎の吹きあがりが激しくなり、その炎の中に何者かが現れた。


 人型をしているが人ではない、妖魔あやかしであろうと思われた。


 炎が人型を形作っているのだ、しかも上半身が異様に大きい。


 しかも軽やかに動く、位置は変えないようだが。


 後衛の銃を持つ二人も、撃ち始めただがヒビさえ入らないのだ。


 当たってはいるようだが、ヒビも入らず前衛二人の攻撃をも凌ぐのである。


 私は、最大威力の『神鳴』を一点集中で、当てようと集中していた。


 みことちゃんは『霊弓』を撃っている。


 この壷、ただものでは無い!


 ならば、これでもくらえ『神鳴!!』と最大威力のものを一点集中で落としたのであった。


 今度こそ、大壺にヒビが入ったのである。


 後衛の銃持つ二人が、そのヒビに集弾させ始めた。


 前衛も、その壺のヒビ目掛けて、打ち込み始めた。


 ある思いが私の心を満たした、先日の餓者髑髏戦で試した大技である。


 『神鳴』ではない『怒雷』の変化形であるアレならば壺の底を削り尽くし、壺を崩壊に追い込めるのではないか。


 そう考えたのだ。


 壺はこちらに偶に、火炎を撃ちかけてきているがまったく効果ないのが分かるのか。


 隙ができた時にのみ、行うようになって来ているのだ。


 ヒビは入れたが、まだ余裕があるように見えるのだ。


 まず『怒雷』を集中する。


 最初から変化形にするため、『怒雷』が壺の中に入るように気を練っていく。


 だが逃げられても困るので、神符を五枚用意する『神符霊縛』の準備だ。


 私は気を練り上げた。


 そして打つ『神符霊縛!』と神符がシュッと飛んで行き、大壺の周囲の五芒星の頂点に突き立つそして淡く薄く白い霊縛結界を張り巡らした。


 霊縛結界であるため、外から内に対しての攻撃は通るのだ。


 そして叫び唱える、『怒雷!!』と。


 『怒雷』が収束して放たれ壺の中に入り込んで暴れる、そのまま壺の中で球状に変化させ、そのまま下方向に思いっ切り飛ばした!!


 壺の下辺りから火花が散りだした、一段階目は成功している!


 二段階目に移るべく、さらに集中した。


 徐々に、炎で作られた妖魔が少し薄くなった。


 何かが、中で起こっているのだろう。


 今は集中するときだ! ここ一番である。


 私はさらに、集中して『怒雷爆縮』の準備を始めた。


 皆は私が集中していることが、分かっているのかいつでもいい様に準備をしてくれているようだった。


 餓者髑髏戦とは逆方向だが、これが決まれば緋色の大壺にとっては致命傷となるハズである。


 私は前へ一歩踏み込んだ、皆が壺から少し離れた。


 『怒雷爆縮!』と唱え、球状の怒雷が爆縮し大壺の中で爆散した。


 その瞬間、炎の形作る人型が消滅し壺に縦横無尽にヒビが入ったのである。


 そこを狙って、前衛と後衛が連携し強打に匹敵する打撃を打ちかけた。


 ここ一番の力を、取っておいたようだった。


 今度こそ壺の終わりだった、緋色の大壺は粉々に砕け散ったのである。


 大壺の欠片から判明したことだが、大壺の底には掠り切れた魔法陣が残っていたのであった。


 つまり実体はない、ということに他ならなかった。


 というところまで波賀はが京志郎きょうしろう警部が、実調を行ったのである。


 私はまだ『隔離世』と『神符霊縛』を解いていない。


 みことちゃんもまだ『防炎』を解いていないのだ。


 それはまだ何かあったら、不味いそういうことだったのだ。


 まだ吹雪さんも薫さんも紅葉さんもまだ、武器を構えたままである。


 器物が妖魔である以上、何が起こっても不思議ではないからだ。


 そして京志郎警部は、銃をホルスターに仕舞って「もう大丈夫だと思います」といったのだった。


 一応私は『黄泉透し』と『霊視』の二つをかけ、破片となった緋色の大壺を見た。


 今度こそ大丈夫そうだった、それを皆に伝える皆は武器を仕舞った。


 私も視覚系能力を閉じた、みことちゃんが『防炎』を閉じる。


 吹雪さんがOKサインを出した。


 私は軽く舞って『隔離世』を閉じた、群青に染まって一部が夜明けの光を放ち始めた空と周囲の喧騒が戻ってくる。


 私は文に“依頼完遂”の文字を書き通信筒に入れた。


 それを確認した真っ白い鳩が、“くるっぽー”と一言いうと夜明けの空に飛び立った。


 私たちは京志郎警部の操る馬車で、溜まり場に送られたのであった。

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