第三話 餓者髑髏

 溜まり場 吹雪/に組の皆


「では、日のあるうちに移動しよう」と私はいった。


 皆がうなづいた。



 空き地 美空/に組の皆


 私は場所に着くと、まず人が周囲に居ないのを確認して軽く舞って『隔離世』を展開した。


 この周囲に存在する妖魔あやかしは今ので、全て入った。


 餓者髑髏とて例外ではない、今ので出現位置がはっきりとしたのだ。


 出現向きまでわかる、ここは【に組】の領域であるが、大路のほうに位置する場所だ。


 先に『神符霊縛』として神符を五枚打っておく、所定の位置に配されていつでも陣が組めるようになった。


 後出しの喧嘩だが、昼間眠っているほうが悪い。


 徐々に、日が暮れて来る。


 今回は接近戦がほとんど無理であるため、握られた時その拳を破壊してもらうように前衛には待機してもらう戦法になっている。


 餓者髑髏が、出現した。


 その瞬間を狙って、私は『神符霊縛』と更に打ち先手を取る。


 二重の『神符霊縛』が、起動した。


 餓者髑髏は大物であるが、二重の霊縛には絡め捕られたようだった。


 動きを止めて、何か叫ぼうとする、が霊縛で縛られているのだ。


 口も同様、動かない。


 そのまま私は、『怒雷』を唱える。


 清められた雷が、宙に縛られた餓者髑髏に殺到する。



 私の隣で薫さんが、曼荼羅マントラを練っている。


 そして『不動金縛り!』と唱えた。


 その瞬間、餓者髑髏がピクリとも動けなくなった。


 みことちゃんが唱えた、『烈火!』と。


 餓者髑髏が、激しく燃える。


 私の少し前で、吹雪さんがモーゼルC96を抜いて銀の弾で餓者髑髏の額の中央に穴を穿ち始めた。



 空き地 紅葉/に組の皆


 凄い術が目の前で、次々と繰り出されていくアタシは気合を入れた。


 いつでも餓者髑髏の手を、即破壊できるように気を練り上げていく。


 今回の役目は凄く重要だ、皆の生命線を握っているのだからだ。


 薫がいつものヤツを、曼荼羅を練っている、少したって『不動明王火界呪』と唱えた。


 餓者髑髏が、紅い炎を噴き上げて燃え始めた。


 薫は印を組んだまま、維持しているようだ。



 空き地 みこと/に組の皆


 相変わらず凄い胆力じゃ、二重の『神符霊縛』を維持した上に『怒雷』まで行使しよるのじゃ。


 薫も紅葉も似たような、胆力じゃ。


 わらわが、小さく見えるほどに。


 じゃが、負けてはおれぬ。


 わらわも『烈火』を、連射するのじゃ!



 空き地 吹雪/に組の皆


 私は今回、弾を多く持って来ている。


 継続戦闘になりそうだった、からだ。


 だが、皆の頑張りが凄いそんなに長くはないかもしれない。


 私は餓者髑髏の額を割るつもりで、撃ち込み始めた。


 額にいい感じに、傷ができつつある。



 空き地 薫/に組の皆


 私は最初から飛ばしていた、金縛りと火界呪の継続である。


 美空さんはすでに、十数度目の『怒雷』という術を放っている。


 私も火界呪の継続で手いっぱいで、他の何かには気づけそうにない。


 そういう意味では紅葉頼みだ、そう思ってチラ見をした。


 向こうも向こうで、気を練り上げているようだ。


 目を元に戻し、ひたすら集中力を上げることにし餓者髑髏を内側から燃すように火力を調整した。



 空き地 美空/に組の皆


 吹雪さんがいい感じに、餓者髑髏の額の傷を広げていく。


 私は怒雷を打つのをいったん止めて『神符斬魔』と唱え、額に斬り込みを入れた。


 パカッと額が割れて、本来何もないはずの部分が見えた。


 中身があるのか、何かが脈打っている。


 『怒雷』をその中に集約した、餓者髑髏がガタガタと震えガチガチと音がした。


 『神符霊縛』を手繰り寄せ、引き締めた。


 振動が僅かに乗るが、誤差範囲にまで抑え込む。


 そのまま、『怒雷』を収束したまま光の球にまで落とし込み、維持した。


 振動が少し大きくなるが、私は餓者髑髏の脳の辺りを焦がすつもりで『怒雷』の威力を高めた。


 餓者髑髏の瞳があるところに、灯っていた鬼火が消し飛んだ。


 今まで合った抵抗が一切なくなる、だがこと切れている訳ではなさそうだ。


 油断することなく締め上げる、餓者髑髏も死に物狂いだ。


 左腕を振り上げようとして、私の『神符霊縛』に拮抗する。


 その左手を狙って、紅葉さんが飛び上がり、拳を叩きつけた。


 左手を支えていた骨が、砕ける。


 餓者髑髏の左手が、崩壊した。

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