第九話 童子

 屋敷敷地内 紅葉/に組の皆・京志郎警部


 屋敷の中にいると不利だと悟ったのか、青鬼が出て来た。


 青鬼は、立派な白い髭を生やしている。


 角は二本だが、大きく張り出している。


 体のサイズは、先の赤鬼や黒鬼と比べると小さい。


 だが一目見て、こいつが童子か! と思った、貫禄がまるで違う。


 名をやると強くなるのだろうと思い、与えぬまま一足で至近距離に飛び込み拳を叩き込んだ。


 薫はさっきの場所で、真言マントラを唱えている。


 薫の大技が来そうだったので、拳を叩き込んでから蹴りを繋ぎで入れた。


 青鬼の体術は少しやるようだが、蹴りを受けきれてない感があった。


 なので蹴りをもう一撃、左から右の低位置にかけて蹴り抜かしてやった。


 まともに左胴に入って、右に青鬼が移動し盛大にコケタ。


 その直後、薫の大技『不動明王火界呪』が炸裂する。


 盛大に燃える青鬼は炎を消そうと池に入るが、薫が印を組んで維持しているので消えない。


 青鬼が印を組んでいる薫に気付いて、薫に接敵しようと池から上がる。


 だがアタシが回り込んで青鬼のアゴを思いっきり、天に向けて打ち上げた。


 タフではあるが、詰めが甘かったといえる。


 青鬼は池の真ん中ほどに、吹き飛ばされた。


 そこに後衛の術が、炸裂する『烈火』や『神鳴』だ。


 『神鳴』の着弾で、池の底が爆発し真上に吹き飛ばされる。


 だがまだ燃えているため目立ち、撃ちかけられている。



 屋敷敷地内 みこと/に組の皆・京志郎警部


 わらわの『烈火』で燃えて、なおかつ『不動明王火界呪』で燃えている状態が長く続いている。


 今が畳みかける時じゃ、とおもって『浮遊』を青い鬼にかけた。


 青い鬼が空中に浮かび、そこで宙に溺れるようにもがいた。


 じゃが、わらわが集中している以上、そこから落ちることはない。


 美空が『怒雷』を唱えた、雷が空中に浮いた青い鬼を捉え絡めた。


 いわゆる電撃に相当する術じゃが、清められた雷の束じゃ。


 青い鬼が更にもだえ苦しむが、この程度ではなかったじゃろう。


 かたきを打つなどという気はさらさら無いが、これまでに苦しめた者たちへの供養になるくらいにはせねばならんのじゃ。



 屋敷敷地内 吹雪/に組の皆・京志郎警部


 京志郎警部は弾が尽きたようだった、致し方ない。


 継続戦闘を考えていた、我々とは違う。


 とはいえ正直こちらもそういうほど、残弾は多くはない。


 狙って撃つコレに限るが、空中で溺れて漂っているため正直狙い辛い。


 だが角を二本とも、撃ち折ることはできた。


 後は何かを左手に握り込んでいるようなので、それの破壊かと思われた。



 屋敷敷地内 美空/に組の皆・京志郎警部


 私は『怒雷』で神雷を絡めつつ、『神符斬魔』で青い鬼の、部位を斬り飛ばしていった。


 流石に三か所も斬り飛ばすと、ぐったりした様子に変わった。


 斬り飛ばしたのは右腕、両足である。


 容赦が無い様に見えるが、青鬼がやって来たことを考えればこれでも生ぬるいくらいだ。


 左手側には『神符斬魔』が通らない、何か隠し持っているのだろう。


 『怒雷』の収束範囲を調整し、左手に一旦全部収束させた。


 “ピギッ!”と何かが、割れる音がする。


 怒雷の雷が、全身にかかるようになった。


 結界は壊れたらしい、これだけの攻撃を受けて尚持つのは凄い耐久力だがもう立てまい。



 屋敷敷地内 薫/に組の皆・京志郎警部


 私は結構長く、術を維持している。


 これほど長く、術を維持させるのは久しぶりだ。


 だが私たちに喧嘩を打ったことを、地獄の閻魔様の前で後悔させてやる。


 そう思って、気を維持する。


 何かが割れる音がして、火界呪の炎が青鬼の全身を焼き尽くしていく。


 今度こそ終り、といえるところまで焼き尽くした。


 最早、炭化した何かであった。


 そこまで綺麗に焼き尽くすと、青鬼は黒い煙となって散った。


 同時に地上に転がっていた、黒鬼と赤鬼の遺体も黒い煙と化して消えた。



 屋敷敷地内 美空/に組の皆・京志郎警部


「終わったな、撤収しよう」と吹雪さんがいった。


 私は『黄泉透し』を実施して、屋敷をじっくり見た。


 もう何も、残ってはいないようだ。


 『天足』を使って、皆を屋敷の外に連れ出した。


 そして周囲に人の気配が無いのを確認し、『隔離世』を閉じた。


 闇夜が、戻ってくる。


「よし、撤収だ」と吹雪さんがいって、馬車に皆で乗り送ってもらったのである。


 今日も、【に組】に、損害はない。

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