第八話 緒戦

 溜まり場 吹雪/に組の皆


 時間は二十一時を指していた、いわゆる午後九時だ。


 だがまだかかるのか、警部が来る様子はない。


 これは寝ずの番かと思った時であった、外で馬車の音がした。


 波賀はが京志郎きょうしろう警部がやって来た。


 幾分か、疲れた表情だった。


「遅くなりまして、申し訳ない」と謝った。


「気にしないで欲しい、我々のほうが遅かったのだ」と私がいう。


「みんな、乗ってくれ。波賀警部、場所は陣防町八ノ五ノ一だ! よろしく頼む」と続けた。



 陣防町八ノ五ノ一のお屋敷 美空/に組の皆・京志郎警部


「美空さん、頼む」と吹雪さんからいわれた、私は軽く舞い『隔離世』を展開した。


 そして『天足』で、皆を屋敷の中に移した。


 屋敷は静まり返っている。


 かすかな妖魔あやかしの気配が、漂ってくる。


 それと同時に、血臭の残りが鼻を突いた。


 すでに何かあった後かと思い、気を引き締める。


「まだ血臭が収まらないとは、相当だな」と吹雪さんがいった。


 私は霊の気配を察するべく、『霊視』をかけ始めた。


 皆はすでにそれぞれの得物を抜いている。


 第一陣が、現れた。


 中位の黒い鬼だ、だが取り巻きはいない。


 単独で、渡り合おうというのか? と思ったら奥に、もう一匹赤い鬼が見えた。


「二匹います、奥に一匹」と私は皆に声をかけた。


 私は後ろに布陣する、中位の赤い鬼に集中することにした。


 矢を射る作法で『霊弓』を引く、そして放った!


 これが、戦闘開始の合図になった。


 黒い鬼に対して前衛二、後衛二で畳みかけている。


 そして、京志郎警部も銃で撃っている。


 みことちゃんも、前衛が離れるタイミングで『烈火』を放っている。


 薫さんが剣で斬り、紅葉さんが殴る。


 赤い鬼に対しては、私と吹雪さんで仕掛けている。


 吹雪さんは、銀の弾丸をモーゼルC96で、撃っている。


 赤い鬼は、もだえている。


 効いているようであるが、少しずつ近づいてくる。


 元々遠くにいただけらしかった。


 逆にいえば、今が討てる時かもしれない。


 そう思った、私は『神鳴』を遠くに設定し最大威力で放った。


 紅い鬼の周囲が吹き飛んだ、紅い鬼自体も遠くに吹き飛んでいる。


 そして最初の位置に、赤い鬼が戻った。


 そこまで『神鳴』は届かないので、『霊弓』を集中し射る。


 黒い鬼戦は、うまくいっているようだった。


 赤い鬼戦も、うまくいきかけている。



 屋敷敷地内 薫/に組の皆・京志郎警部


 後衛あっての前衛だ、そう思いながら黒鬼の急所らしき部分を抉り突いていく。


 隣の紅葉も善戦している、上手く一撃が入っている。


 前衛が離れたところに『烈火』が、炸裂している。


 黒鬼は得物を持たない、格闘派らしい。


 紅葉の拳を避け、蹴りも飛んでかわす。


 この輪廻が、数十回と続く。


 こちらも少し疲弊しているが、黒鬼はもっと疲労の色が見えるくらいに濃い。


 もう一匹の様子は見えないが、そちらも順調らしい。



 屋敷敷地内 吹雪/に組の皆・京志郎警部


 赤い鬼は、徐々に弱りつつある。


 こちらも、もう二度目の銀弾装填だ。


 近寄れないように、美空さんの術で吹き飛ばされて我々にハチの巣にされる。


 その順繰りだ、だが鬼というのは底なしに近い体力があるのだ。


 少し、恐ろしさを感じさせられた。


 中位といわれる鬼でコレだから、童子といわれる鬼は相当なのだろう。


 頭を狙って当てていても、コレだからなと思い。


 一撃集中のピンポイントで、大きい目を狙って射貫きで撃った。


 目に飛び込んで右の目を潰した、その瞬間赤い鬼が怒り狂って目の前に飛び込んできた。


 それを計っていたのか? 紅葉が一歩右に出て来て、飛び込んできた赤い鬼の股間と思しき部分を思いっきりぶん殴った。


 流石に急所をやられると不味いのか、一撃で赤い鬼が地響きを立てて仰向けに倒れて行った。


 黒い鬼が慌てて、下がろうとした。


 今度はみことの術が腰蓑部分に炸裂した、腰蓑が物理的に燃えて無くなる。


 黒い鬼が慌てふためいて、股間を押さえて逃げようと背を向けた。


 そこに薫の剣が深々と、左のケツに刺さった。


 隠している部分だけあって、弱いらしい。


 そこに紅葉の拳が、反対側のケツにめり込んだ。


 悶絶もんぜつする黒い鬼、だが薫の剣がさらに伸びて表側まで貫通した。


 黒い鬼も絶命したようだった、仰向けに倒れて来た。


 薫は剣を抜き、血を払って回避した。

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