第五話 連絡

 連絡会合場 吹雪


 私たちの【に組】のように、上に姫君のような方がおられるのは特殊な事例である。


 全十三組の内の、二組だけであるのだ。


 【い組】と【に組】だけであり、他の十一組には上役というまとめ役がいるだけである。


 ようするに普通は目に見える場所に上役がいて、その上役からの指示で組が動くのが普通とされている。


 なぜこの会合が組長級で行われているか、というと上役の有無であるからであった。


 それが分かっていない奴が、先ほどの高階たかしな賢吾けんごであった。


 上役よりも、組長のほうが偉いと思っているようである。


 そういう意味ではさっきは黙ったが、まだ視線では何かいいたそうだった。



 溜まり場 美空/に組の皆


「流石に遅いんじゃねえか?」と紅葉さんがいった。


 確かに時間は、十九時を示している。


「本来は解散時間ですが、今日は延長します。吹雪さんが帰って連絡が行われてからが、解散です」と、有無をいわさぬ迫力で私はいった。


「分かったのじゃ、何か用意は始めようぞ。握り飯くらいは、用意しておくのじゃ」とみことちゃんがいった。


 それには、うなづいて了承する。


「また高階が突っかかって、遅れているのではないでしょうね」とかおるさんがいう。


 多分、当たりだろう。


 コメがかれ握り飯が作られる段になって、ようやく会合から解放された吹雪さんが帰ってきた。


「握り飯、できていますよ」と薫さんがいった。


 二十時にはかかっていた。


「みんな集まってくれ、少し込み入った話だ」というと、吹雪さんは皆が集まったのを、確認し話し始めた。


 実際のところ、各組の分担は、はっきりと区分けされているわけではない、それぞれの区域が被るようにされ、網目ができないようにされている。


 吹雪さんの持ってきた話を要約すると〈その枠組みを超えて活動することを許す〉、超法規的な措置である。


 但しいきなりその組の区画に行って、挨拶もなしに取りつくのは広義になしとされている。


 それが許されるのはその対象が、逃走して他の組の区画に行ったときだけだ。


 だから連携といわれるのだ、ということであった。

 

「つまり【ち組】、【ろ組】、【へ組】、【り組】、【る組】の方が来られることはあっても、まかり間違っても【ほ組】はこない。という理屈だが、それが真面に機能するとは考えにくい」と吹雪さんはいわれたのである。


 だが【ほ組】の領域から考えるにはこちらの領域に来るには自身の領域で取り逃し【ち組】の領域上で手を出さないことを選択して、こちらの領域にわざわざ追い込んで……という手を取らない限りはこちらに直接来ることはできない。


 だがそれは明らかな取り逃がしに加えその隣の領域で仕留めず、わざわざこちらに逃がすなど愚どころか私たちは仕事ができません、といっているようなものなのだ。


 そういうことは、無いといえた。


 逆に私たちの領域に無理やり入って、獲物を狩るようなことをすれば荒れるのは目に見えている。


 どう考えても、そちらのほうを選ぶとは思えなかったのだ。


 くだんの吹雪さんが見つけたという、お屋敷は我々の領域下にある。


 お屋敷であるが、吹雪さんが会合でその所在を明らかにはしている。


 だから場所は教えた、という状況にはなっている。


「だから、普段より注意を払ってくれ。【ほ組】がやらかすより前に、鬼を仕留めないといけないかもしれない」と吹雪さんはいった。


 確か【ほ組】の構成は、男しかおらず女はいなかったはずだ。


 しかも剣客の寄り合いみたいな組で、精々武器が霊刀のなりそこないみたいな辛うじて効くかどうかといった得物を持って威張っていたはずである。


 多分普通の鬼と接敵しても、勝てるヤツはいないであろうと思われた。


 今回の相手は最低が中位の鬼で、一番上は大鬼しかも童子の名前が付く前の大物であるはずだ。


 どう考えても【ほ組】の構成では、死人が出る可能性しか考えられない。


 もう一つの位階という構成では、二級が一人、三級が三人、残りは四級二人、五級四人だったはずである。


 まず組の格というものさしで見ても、上から七番目に入っているのが不思議なくらいの構成だ。


「まさか、私たちの庭先を練り歩いてくれる。のでは、ないでしょうね?」と私が気になることをいった。


「それもあるかもしれんな、すでに件の場所は開示してある。そいつらが、仮装行列しないとも限らんな」と嫌気がさしたような顔の、吹雪さんがいたのであった。

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