第三話 間

 溜まり場 みこと/に組の皆


「……ということがあっての」とわらわは、話し終った。


「鬼か、この都に入ったヤツがいるということか。気になるので、調べさせていた件があってな。兆候は妖魔あやかし事件の、それなのだが。まだ屋敷の主を見ていなくてな、で断定できていないのだ」と吹雪さんがはなした。


「こちらには、特にそんな噂もないですね」と薫がいう。


「昨日のことなんだが、河原で喧嘩合戦をやったんだ。大分長くやったはずなのに、官憲の介入が無くてな。で、大将が普通じゃなかったんだ。普通の打ち込みでは倒れなくて、変だと思ったからな。アレを乗せたら徐々に効いて行ったから、コレは妖魔だと思ったんだ。だが、最後まで変化しなくてな。かなり厄介な、相手だったぜ」と紅葉がいった。


「そのものの、影は見ましたか?」と美空が紅葉に聞いた。


「いや、見てねえ」と紅葉がいった。


「ということはただ力を、契約によって貸しただけでしょう」と美空が断定した。


「それも鬼の可能性があるが、例の事件で逃げている。鬼の数は、何匹だ?」と吹雪さんがいった。


「姫からの知らせでは、三匹ですね」と美空は答えた。


「でも昨日の鬼は、逃げたヤツとは異なると思います。普通の鬼でしたし、大鬼と中鬼が二匹と聞きますから。三匹が同じ種類のものでしたら、分かるんですが」と美空は何か、思案したのであった。


 その時であった、庭に一羽の鶴が降りたのであった。


 そのままわらわを通り過ぎ、美空の前まで進んで式神の変化を解いた。


 そして巻文に、変わったのじゃった。


 美空が読みだした、そして少しして顔色が変わった。


 そのまま中途で吹雪さんに渡した、そしてそのまま考え込んだのじゃ。


 吹雪さんが今度は巻文を読んでいる、顔は険しそうじゃ。



 溜まり場 薫/に組の皆


 巻文を読んでいた、美空さんの様子がおかしい、何か考え始めた。


 今度は吹雪さんも、険しい顔をして巻文を読んでいる。


 私は吹雪さんが、巻文を読み終わるまで待った。


 そして読み終わった吹雪さんに声をかけようと思ったが、それどころではないといったふうで慌てて探偵社のほうに戻られたのであった。


 仕方なく考え込んでいる、美空さんに聞くことにした。


「何か大変なことでも、あったのですか?」と静かに聞いた。


「鬼が、居を、ここの都に移したの」といわれた。


 確かに一大事だ、都に移されてはたまったものでは無い。


 だが、私に出来る事は少ない。


 見えていれば何とかるのになあ、と思い私も思案する羽目に陥った。



 溜まり場 紅葉/に組の皆(吹雪を除く)


 美空から「鬼が、居を、ここの都に移したの」といわれた。


 鬼と聞いて昨日のヤツを思い出すが、アレは鬼っていうよりも鬼の威を借る何かであった。


 アタシに出来る事は、目の前に現れた鬼をほふるだけだろうと思われた。



 溜まり場 みこと/に組の皆(吹雪を除く)


 美空が「鬼が、居をここの都に移したの」といった、確かに昨日鬼と遭遇した。


 じゃが、アレは下っ端もいいところじゃろう。


 本陣が分からなければ踏み込みようがない、そう思うのじゃ。



 溜まり場 美空/に組の皆(吹雪を除く)


 私は、思案していた。


 初の連携作戦にして、大規模討伐戦である。


 今回参加する組はこの都内に配置された組一つを除く、すべてで九組が動員されるようだ。


 組と一重にいっても私たちのような小さい五人組から十人組の大所帯までさまざまで、連携ができるかどうか怪しいのだ。


 それに私たちは数が少ないだけで、実質の強さは上から数えたほうが速い。


 三級や四級、五級しかいない組なども、無いわけではない。


 私たちの構成は、一級一人、二級上一人、二級二人、三級一人であるのだ。


 一級を要する組は数少なく、今回外された【い組】を除けば私たちともう一組しかないのだ。


 大抵は二級か三級が組長でおり、構成組員に四級や五級が混じり決定打にかけると思われた。


 そのもう一人の一級とは、かの安倍家の跡取りである。


 現在都の北東守護を担当する、【ろ組】に属するといえた。


 ウチの【に組】は、組を率いる組長の吹雪さんが二級上、私が一級、紅葉さんと薫さんがそれぞれ二級、みことちゃんが三級という構成だ。


 他の組に比べ階位が高いため、五人でやっていけるのである。


 だがそれを分かってない人たちも少数だが、存在するのだ。


 十人揃えてもらえなかった組、というのである。


 私からいわせれば十人いないと解決できない組、としかいえないのだが……。

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