第三話 賞与

 ある邸宅前 美空/に組の皆


 私に接敵するモノが、いなくなった。


 私はすでに、自分で開けた大穴に囲まれていて動けなかった。


 橋でもかけてもらえなければ、または術でしかこの状態から戻るすべはないだろう。


 陣を崩してよいかどうかは、吹雪さんの判断がいる。


 私一人、勝手に動くわけにはいかないのだ。



 ある邸宅前 吹雪/に組の皆


 接近するモノがいなくなった。


 美空さんが孤立している、いやさっきからそうか、大穴が堀のように穿たれ大地に窪地を作っている、多分上から見ると丸いのだろう。



 落とすものもちを這うものもいなくなった。


 残弾も、二十を切った。


 これ以上戦闘継続しろといわれても、もう弾が無い。 


 銀弾は高いのだ、今回は赤字だろう。


 こちらから支出を問えぬので、そのようになるしかないのだった。


 もう邸宅の上に石像はいない、全てがガーゴイルだったようだ。


 私から皆に近寄って行った。


 ある邸宅前 紅葉/に組の皆


 吹雪さんが近寄ってきている、アタシは聞いた「もう終わりですか?」と。


 「もう終わりのようだ、美空さんに確認してもらおう」と吹雪さんがいった。



 ある邸宅前 みこと/に組の皆


 吹雪さんが前に歩いていく、陣が崩れぬように、わらわも前に歩いて行った。



 ある邸宅前 薫/に組の皆


 みことちゃんが歩いてくる、吹雪さんの方を見た。


 陣を崩すべく、前に向って歩いて来ていた。


 私は、美空さんの元に行くべく準備をした。


 橋でも掛けないといや、術でも使わないといけないくらいに大穴だ。



 ある邸宅前 美空/に組の皆


 みんなが近づいてくる、戦闘のほうはもう終結したらしい。


 吹雪さんに声をかけられた「もう上に異常はないかい?」と。


 私は邸宅の上を見た、綺麗な青空だ。


 もうなにも、居そうになかった。


 そのように伝えるべく『天足』を使って吹雪さんの元へと向い、その事態を伝えた。


「結界を解きますか?」と吹雪さんに聞いた。


「頼む、やってくれ」という返答が返った。


 私は『隔離世』を畳んだ、外の喧騒が戻ってくる、ちゃんと大穴も開いている正常だ。



 ある邸宅前 美空/に組の皆


 吹雪さんが外国の高官に、流暢な向こうの国の言葉でまくしたてる高官を黙らせたようだった。


 凄いところだと思う、私にはまねできない。


 まあ全て終わったみたいだし、今日は帰ろうかと思ったのである。


 馬車に向おうとする、本日も馬車を出してもらっていたのだ。


 無事馬車にはたどりつけ、帰ることができた。



 溜まり場 薫/に組の皆


 今回の赤字は多分吹雪さんだけだろうと思われた。


 顔に書いてあるのだ、まあソコソコ長い付き合いではあるので、表情で大体察することができるのだ。


 今回は撃ちまくってた分が、響いていると思われた。


 致し方ない、接近されると危険ではあるので、撃ち倒すしかない、のである。


 その他のメンバーは、お腹が空いたくらいであろうと思われた。


 私がそうだからという強引な推測であるが、この答えはほぼあっていると思われた。


 普段が検非違使けびいしとしての基本給が八円であるので、明らかにオーバーしたなと思われたのだ。


 組長であるということで九円くらいのはずではあるが、それでもオーバーしているとおもわれた。


 秘密組織ではあるが、基本給があるのである、私たちはその基本給で、学校に通っているのだ。


 多分、美空さんとみことちゃんは、貯めているであろうと思われた。


 私も余剰分は貯蓄に回している。


 私たち組員は消費するところが、学費くらいなので消費を普段しない。


 だが組長になると色々と入用になったり、吹雪さんの場合は弾代にかかるはずなのだ。


 そして次の週に賞与がもらえたのであった、それも五十円大金である。


 だが吹雪さんはそれでも、あまり浮かない顔をしていたのである。


 理由は分からなかった。

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