第五章 石像

第一話 石像

 ある邸宅前 吹雪


 私はこの邸宅で起こる、殺人事件の犯人を捜しに来ていた。


 探偵としては数多く仕事をしてきたが、こういうものの話は初めてである。


 気配がしないのだ、何者か生者なら気配が残るはずなのだが気配なき殺人事件であるのだ。


 官憲も調べたが何も出なかったと聞く、私も調べたが何もないのだ。


 不気味なくらいに、目立つものといえば大小さまざまな石像の群れである。


 証拠集めをしていると、誰かに見られているような感覚がある。


 だがそれを調べようとすると、視線を見失うのだ。


 それが不思議でならなかった。


 被害者はいずれも男性で、この家を改築しようとしたり、取り壊そうとしたりしたものだけで、他に被害は出ていない。


 それも不思議なのだ、凶器すらも出ていない。


 それも不思議だった、でも撲殺なのだそれは分かっている。


 凶器は鈍器と思われたが、上がっていないのだ。


 石像が凶器です、とかいわれた方がまだ分かりやすい。


 だが奇妙な関連性がある、足跡もないのに撲殺なのだ。


 天使に蹴られたとでもいいたげに、邸宅はそびえ立つ、さも当然のように。


 迷宮入りしそうになったから呼ばれた、ピンチヒッターというだけなのだが。


 だが厄介なことに私もこの難問を解けそうにない、まだ前金をもらう前だ無理だとでもいおうかと思った。


 とりあえず、死者の出た線を追ってみる、この邸宅の周囲でしか起きていない。


 いったん攻めてみよう、そう思った。


 受けるのはそれからでもいい、そう思ったのだ。


 そしてこの邸宅の周囲を散策し始めた、当然石像にも目は配っておく悪魔などが隠れている可能性もあるからだ。


 そして五人の死者の数だけ、血に濡れたような赤い手をした石像があることを発見したのだった。


 だが関連性はない、あるとすればその石像全てに翼があることくらいだ。


 足跡が無い段階で、殺人者は人間だと考えにくい。


 足跡を消す方法が無いわけでもないが、五人全員にしかも別々の場所でなんて無理に等しい。


 だから悪魔説か石像説を考え付いたのだ、但し立証しようとするならこの邸宅の増改築を考えてみないといけなくなるのだ。


 死者五人に共通するのは、性別とその件しかないのだ。


 私は女だが多分それを実行しようとすれば、襲われるだろうと思っていた。


 それを知るのは、女性が殺害されてからだった。


 つまり邸宅の増改築または、取り壊しに関われば殺される。


 そこまでは立証できたのだった。


 まだ受けていないから私には非はないが、ご冥福を祈るとして。


 どうすれば犯人を立証できるのか、それが問題だった。


 確かに赤い腕の石像が、もう一つ増えていたのである、間違いは無さそうだった。


 だがこれをいうと確実に変人扱いされる上に、次の仕事が舞い込まなくなること請け合いだった。


 これはれっきとした、妖魔あやかし犯罪であるといいたいがそういう分けにもいかない。


 苦肉の策だが、お祓いでも講じてみればいいのでは? といって、私はこの依頼を避けたのだった。


 まさか御霊神宮に振るとは、思わなかったわけだが。


 確かにお祓いはできるが何を祓うのか? という質問が神宮側から出たのだった。


 事故物件として祓うのか、それとも祈願で願うのか? という質問が飛んだのだ。


 通訳が間に立っていたが難しそうだった、神社をいわゆるエクソシストか何かと勘違いしているらしかった。


 それは、話が通るまいと思った。


 しかも政府がややこしく噛んでいるのだ、諸外国の政府が政府公館としたかったらしいがこれだけ人死にが出ている建物だ。


 もう事故物件です、なのだが。


 面戸臭そうというわけで、私は断ったのであった。


 外国の高官がいい加減なことをいうのでまたややこしく、神宮側も見捨てたのである。


 そしてエクソシストが動員されたが、全員不慮の事故で亡くなった。


 増改築する高官を守って、その高官も当然死んだのだが。

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