第三話 治癒

 町長屋 薫/美空・吹雪・みこと・大家(琴音)


 緋鎧の鎧武者が大業物を担いで、胸に下げた銅鏡に触れた。


 緋鎧と大業物が、消える。


 その瞬間、美空さんが現れた。


「みなさんの手当てを」と美空さんがいった。 


「ありがとう、助かりました」と私はいって力が抜けたように、へたり込んでしまった。


 みことちゃんも、後から現れた。


 みことちゃんは癒しより攻撃派なので、癒すのには時間がかかるとのことであった。


 そのため美空さんに、治療は全て任せているようだった。


 現に私の腕の傷は、一分と経たぬ間に元の腕に戻った。


 吹雪さんのほうにそのまま治療をしていく、それほどの時間を要せずに吹雪さんの怪我も治った全快である。


 麒麟の神子の力なのだろうと思われた。


 そのまま、お婆様の腰も治していく。


 もう黒いシミは残ってなかった、だがまだ神符結界が残っている。


 浄化しきるまで、まだもう少しこのままらしい。


「流石だな」と吹雪さんが、いった。


「まだまだですね、ここまで時間がかかってしまいましたから」と美空さんは、答えられた。


「何を狙っているのか、不明でしたし。私は『神命』でことを知って、駆けつけただけですから。少々、疲れました」と美空さんはいった。


「わらわも走り通しで、疲れたのじゃ」とみことちゃんも、いった。


「それくらい、元気でないとな」とお婆様は、いって「着替えたら、牛鍋を食べに行くが来るか?」とお婆様がいわれるので「いいんですか?」と私は答えていた。


「おぬしらが居なかったら、わしはもう亡くなっていたじゃろう。それくらいしても、罰は当たらんわ。カッカッカッ」と笑われたのでみんなで町娘ふうに着替え、食べに行ったのであった。



 牛鍋屋/くろべ江 薫/美空・みこと・吹雪・大家(琴音)


「これが牛鍋じゃ」とお婆様がいった。


 思わずゴクリと誰かの、喉が鳴った。


 肉の塊が、薄い鍋にたくさん並んでいて。


 赤味噌がその上に乗り、そこに太ネギの白い身が刺さっているのだ。


 鍋を囲んで、五人が食べだした。


 紅葉を除く五人、私、美空さん、みことちゃん、吹雪さんとお婆様の五人だ。


 肉が昔は薬だったそうで、明治生まれの私たちからでは考えられないことだが。


 そういう時代が、あったとお婆様は教えてくださった。


 分厚いわりに、肉は柔らかい硬くないのだ。


 ここの店の出すものは、すごく評判がいいのだそうだ。


 御婆様はたまに来るらしく、この店の常連であるらしい。


 紅葉が居なくてよかったと思える点があった、居たら肉のお代わりがバンバン飛ぶような気がしたのだ……。


 お高くつくような気がするのだ、あの子はたくさん食べるから……。

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