第二話 鵺
御霊神宮/社務所内 美空
『神命』が走った、【鵺が本陣に降りた!】
動く理由はそれだけで十分だ
「行ってくれ、ここは人が居る」といわれた。
一礼だけして溜まり場に急いだ、だがどんなに急いでも十分はかかる。
走る走る走る! 今はただ走るそれのみである。
暴風雨の中をひた走った。
◇
御霊神宮/社務所 みこと
美空が急に立ち上がって、長の元で何か話している。
緊急事態か!? わらわも長の元に急いだ。
美空が一礼して集会所を出た。
長に聞いた、何かあったのかとそっと。
「鵺が本陣に降りた、行ってきなさい」とそっと教えてもらえたので、わらわも一礼して集会所を出た。
そして走るしかない、辻馬車もこんな天気では走ってはいない。
天気を呪ったがそれはヤツの思う壷じゃ、と思い走った。
◇
風祭探偵社 吹雪
「私は、少し席を開けるぞ事務所を頼む!」と秋山さんに伝える。
といって己の直観に従って行動した、小太刀を引っ掴んで階段を駆け下りる。
目と鼻の先だが、急いでも三分はかかる。
死に急ぐなよ、と思いながら走る。
◇
町長屋 薫/吹雪・美空・みこと・大家(琴音)
「お婆様、下がれますか?」と
「だめじゃ、腰が抜けとる」といわれた。
鵺は悠々としていてこっちが不利であることが、分かっているかのように動く。
確かに不利だ、だがこの距離は私の距離だ!
そう思って、鵺に近付こうとする。
だが鋭い虎の爪で薙ぎ払われた、猿の顔が笑みを作る。
虎の爪を前足に出し、後ろ足も虎の爪が鋭く伸びた。
血の臭いがした、少し痛みがあった。
腕を少しかかれたらしい、少し痛みで鈍る。
だが構えを、解かない。
ここで引いては、負ける!
そう思った時扉がガラリといい勢いで開いた、増援だ!
吹雪さんが小太刀を抜いて、鵺に突きこんでいった。
だが届く前に、爪で払われてしまう。
辛うじて避けたようだが、浅くかかれたようだ。
不味い、得物の伸遠はもう限界にきている。
所詮、剣だ。
ここで銃は不味いのだろう、持って来てないようだ。
火界呪も同様に不味い、燃えるものの多いところでは使用に限界がある。
それから何かを待っているのか近付くフリを見せると、爪が薙ぎ払われ私たちのほうに被害がかさんで行った。
私の霊力が尽きたらしく、オーラをまとっていた剣からオーラの輝きが消えた。
まるで生殺しを愉しんでいるかのような、猿の表情である。
紅葉が居れば、間違いなくそんな顔はできなかったろうにと思う。
もう十分ほどは過ぎているであろう、近寄ろうとするたびにこちらに傷が増えていく。
だがお婆様のほうに、寄せるわけにはいかない! そう思って視線だけは逃げない、を貫く。
爪の威力が大きいので、中々接近できないでいた。
『神符霊縛』と術の声が響き渡った。
鵺が移動しようとするが、意地でも動いてやらないつもりで剣を構えた。
神符が飛んできて、鵺を中にした五芒星の位置につき立った。
そのまま、霊縛陣の白い結界を構成する。
緋鎧の武者が飛び込んできた、大業物も持っている。
その大業物で鵺を斬りつけた、初めて鵺が顔を
その直後『烈火』の術が炸裂し、炎が白い結界の中に舞った。
さらに顔を
結界の力場のせいで動けなくなっていると分かったので、剣を突きこみに行く。
さっきまでの借りを返しに、力強く突きこんだ。
吹雪さんも同様に、小太刀を突きこんでいく。
さしも三人に肉薄、斬り込まれると弱いようで鵺も血を流し始めたようだった。
鵺の立っているところが、黒く染まっていく。
鎧武者が、神符を懐から出した。
『神符斬魔』と唱え大業物にまとわせ、そのまま鵺に突きこんだ!
白い刃が大きく展開され、それに鵺が突き刺されていく。
黒い体液が結界の中を満たしていく、苦しそうに悶える鵺。
いい気味だと思い、さらに剣を突き込んだ。
吹雪さんも、もう一歩踏み込んだようだった。
突きこんでいる全員の武器に印が浮かび上がり燃えた、そして刀身が燃えている。
そのまま私は斬り落とした、鎧武者は斬り上げて、吹雪さんは切り下ろした。
さしもの三撃攻撃に鵺がこと切れる、そのまま黒い霞が結界を満たして消えた。
緋鎧の鎧武者が、大業物を結界から引き抜いた。
大業物に鞘は無いようだった。
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