第二話 鵺

 御霊神宮/社務所内 美空


 『神命』が走った、【鵺が本陣に降りた!】


 動く理由はそれだけで十分だおさの元に行く、そして耳打ちをした。


「行ってくれ、ここは人が居る」といわれた。


 一礼だけして溜まり場に急いだ、だがどんなに急いでも十分はかかる。


 走る走る走る! 今はただ走るそれのみである。


 暴風雨の中をひた走った。



 御霊神宮/社務所 みこと


 美空が急に立ち上がって、長の元で何か話している。


 緊急事態か!? わらわも長の元に急いだ。


 美空が一礼して集会所を出た。


 長に聞いた、何かあったのかとそっと。


「鵺が本陣に降りた、行ってきなさい」とそっと教えてもらえたので、わらわも一礼して集会所を出た。


 そして走るしかない、辻馬車もこんな天気では走ってはいない。


 天気を呪ったがそれはヤツの思う壷じゃ、と思い走った。



 風祭探偵社 吹雪


「私は、少し席を開けるぞ事務所を頼む!」と秋山さんに伝える。


 といって己の直観に従って行動した、小太刀を引っ掴んで階段を駆け下りる。


 目と鼻の先だが、急いでも三分はかかる。


 死に急ぐなよ、と思いながら走る。



 町長屋 薫/吹雪・美空・みこと・大家(琴音)


「お婆様、下がれますか?」とぬえとの間合いを詰めながら、私はお婆様に聞いた。


「だめじゃ、腰が抜けとる」といわれた。


 鵺は悠々としていてこっちが不利であることが、分かっているかのように動く。


 確かに不利だ、だがこの距離は私の距離だ!


 そう思って、鵺に近付こうとする。


 だが鋭い虎の爪で薙ぎ払われた、猿の顔が笑みを作る。


 虎の爪を前足に出し、後ろ足も虎の爪が鋭く伸びた。


 血の臭いがした、少し痛みがあった。


 腕を少しかかれたらしい、少し痛みで鈍る。


 だが構えを、解かない。


 ここで引いては、負ける!


 そう思った時扉がガラリといい勢いで開いた、増援だ!


 吹雪さんが小太刀を抜いて、鵺に突きこんでいった。


 だが届く前に、爪で払われてしまう。


 辛うじて避けたようだが、浅くかかれたようだ。


 不味い、得物の伸遠はもう限界にきている。


 所詮、剣だ。


 ここで銃は不味いのだろう、持って来てないようだ。


 火界呪も同様に不味い、燃えるものの多いところでは使用に限界がある。


 それから何かを待っているのか近付くフリを見せると、爪が薙ぎ払われ私たちのほうに被害がかさんで行った。


 私の霊力が尽きたらしく、オーラをまとっていた剣からオーラの輝きが消えた。


 まるで生殺しを愉しんでいるかのような、猿の表情である。


 紅葉が居れば、間違いなくそんな顔はできなかったろうにと思う。


 もう十分ほどは過ぎているであろう、近寄ろうとするたびにこちらに傷が増えていく。


 だがお婆様のほうに、寄せるわけにはいかない! そう思って視線だけは逃げない、を貫く。


 爪の威力が大きいので、中々接近できないでいた。


『神符霊縛』と術の声が響き渡った。


 鵺が移動しようとするが、意地でも動いてやらないつもりで剣を構えた。


 神符が飛んできて、鵺を中にした五芒星の位置につき立った。


 そのまま、霊縛陣の白い結界を構成する。


 緋鎧の武者が飛び込んできた、大業物も持っている。


 その大業物で鵺を斬りつけた、初めて鵺が顔をしかめた。


 その直後『烈火』の術が炸裂し、炎が白い結界の中に舞った。


 さらに顔をゆがめる、鵺。


 結界の力場のせいで動けなくなっていると分かったので、剣を突きこみに行く。


 さっきまでの借りを返しに、力強く突きこんだ。


 吹雪さんも同様に、小太刀を突きこんでいく。


 さしも三人に肉薄、斬り込まれると弱いようで鵺も血を流し始めたようだった。


 鵺の立っているところが、黒く染まっていく。


 鎧武者が、神符を懐から出した。


『神符斬魔』と唱え大業物にまとわせ、そのまま鵺に突きこんだ!


 白い刃が大きく展開され、それに鵺が突き刺されていく。


 黒い体液が結界の中を満たしていく、苦しそうに悶える鵺。


 いい気味だと思い、さらに剣を突き込んだ。


 吹雪さんも、もう一歩踏み込んだようだった。


 突きこんでいる全員の武器に印が浮かび上がり燃えた、そして刀身が燃えている。


 そのまま私は斬り落とした、鎧武者は斬り上げて、吹雪さんは切り下ろした。


 さしもの三撃攻撃に鵺がこと切れる、そのまま黒い霞が結界を満たして消えた。


 緋鎧の鎧武者が、大業物を結界から引き抜いた。


 大業物に鞘は無いようだった。

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