第三話 元凶
御霊神宮 美空
相変わらずご祈祷、お祓いのものの列は長く続いている。
ここのところ満員御礼といったところだが、少々長く続き過ぎているような気がする。
この町の人が不安になっていることの表れだ、私は姫からの文を待つしかない身だ。
だが勤務しているときはあくまで笑顔を絶やさない、それが巫女たるものの務めであるからだ。
暗い表情をさせることはあまり良いとはいわれない、そういう神社の顔であるからして。
都合、巫女頭などをやっているとそう思う。
だが不意打ちというものは往々にしてあるものなのだ「これを受け取ってください、と私の前に花束が差し出される」だが酷いようだが、こういう「受け取れません、私は仕事中です」と。
そういって立ち去る。
フル・フラナイといわれるが仕事中には禁じ手だ、そこらを相手は分かっているのだろうか?
自らが最も忙しい時に同じことをされて、静かに対応できるのであろうかと。
ツレナイようなことをいうが、私の左前方には御祈祷やお祓いを待つ人の列がある。
その人たちの前で、花束を受け取るなどあってはならぬことだ。
記者として考えるなら、つまり大スクープ目の前にして大スクープをフイにして花束を受け取るようなものなのだ。
あり得ないことだ。
警察官なら、捕物の最中に花束を受け取るようなものなのだ。
絶対にクビになる。
そういうことを、平気でやる心が信じられない。
コレは抗議しようそう思った、そう思った時白い一羽のヤタガラスが飛んできた。
足が三本ある、間違いない姫の式だ。
手に留まらせる、と紙に戻った。
文が書いてある、内容はここでは省くが一大事であった。
神宮の長にこのことを手短に伝えながら「みことの手も必要だ」といって、先に溜まり場に急いだ。
◇
溜まり場 美空/に組の皆・京志郎警部
溜まり場に行く前に何時ものコースを通り、大家さんに吹雪さんを呼んでもらう。
学生陣が暇そうに転がっていた、「一大事ですよ」といって切り込んだ。
吹雪さんがすぐに現れた、文を見せる、すぐに顔色が変わった。
「大物だな弾では弾かれるかもしれんな、京志郎に電話をかけよう」と吹雪さんはいった。
そのあとでみことちゃんも来た。
とりあえず仕事の話が先だ、六人乗りの馬車を用意してもらう。
京志郎警部が御者に伝え、そのまま来てくれた。
「手配が間に合わんな、廃寺とは盲点だった」と吹雪さんはいわれたのだった。
とりあえずみなで馬車に乗った、目的の廃寺まで飛ばしてもらう都市の中心からはそこそこ離れている。
問題は向こうが、迎え撃つ準備を確実に使ってくることだった。
廃寺に乗りつけると、確実に迎え撃たれる。
裏をかくため近くまで行ってもらって、そこから徒歩になった。
◇
廃寺近辺 美空/に組の皆・京志郎警部
普段社の森を歩きなれている私でも厄介に思う位の森だ、鎮守の杜とは勝手が違う。
前衛が静かにとハンドサインでいった。
静かな歩みに切り替える、音を立てないように地面を選んで歩く。
霊視に反応した、大物が二体、人と思しきものが一体、屍が五体、数で上回られている。
危険だった。
屍は一掃できる自信がある。
だが問題は大物のほうだった見た事が無い種類なのだ、危険を通じさせる。
あと人型が、生きているのか死んでいるのか判別できなかった。
篝火などの光源はない、月光のみが光源だった。
周囲を、静寂が包む。
式術でも使えればよかったのでしょうけれども、と思ったが今はいわなかった。
神使でもいれば変わったのだろうが今はいない、無いものねだりをしても仕方がなかった。
◇
廃寺前 美空/に組の皆・京志郎警部
吹雪さんからいつも通り、“やってくれ”という指示が来た。
私は『隔離世』を展開する。
私の位置は今ので、バレているはずだ。
前衛に『祝福』をかける。
ツートップ・ワンセンター・スリーバックの態勢だ。
獅子の顔が両方についている、ただ右側が獅子の顔だが左側はそれぞれ違った。
右にいるほうの左顔がヤギで、左にいるほうが何か分からない獣の顔だった。
獰猛さでは虎に譲るが、それに近い顔立ちだ。
人は術者のようだった。
明らかに人数的に不利だ、そう思った私は『神鳴』を落とし雷鳴を轟かせた。
今の『神鳴』で、屍五体は確実に塵と消えた。
前衛と獣が、それぞれ一対一の戦いをするように挑む。
だがガタイの良さで押されている薫さん、闘牙をまとって戦う紅葉さんは獣を相手に一歩も引いていない。
薫さんの支援に、みことちゃんと京志郎警部が加勢した。
術者は私と睨み合っている。
お互い攻めあぐねて居るのだ、そこに吹雪さんが加わった。
術者は何とかなりそうだ、京志郎警部が紅葉さんの支援に回った。
今回の指令は討てだったので、手加減をしなくていいが見届け人を擁するのは前々回と同じだった。
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