第三話 決意

溜まり場 美空/に組の皆


 私がたたえる瞳について、吹雪さんが気付いたようだった「美空さん何か無茶をやろうとしていないか?」こういう時の、吹雪さんの勘はよく当たるのだ。


「まあバレてしまいますか、でも的確な。いいえ正確な場所を知ろうと思ったら、この手しかありませんよ?」と私は決意を秘め、伝えるのであった。


 餓鬼自体はそう強くはないが今回のように増殖している、と思われる懸案に対しては有効な攻略法が見つかってないのである。


 早速試すことにする。


 目を半眼に開き黄泉透しを宣言し、神命を受ける用意をする【陣防町一ノ七ノ一】と早速下りた。


「陣防町一ノ七ノ一です、お屋敷の内部に巣くっていると思われます」と宣言した。


 そこに丁度三人が揃った「そこが件の餓鬼の居場所か、トッチメテやる」と紅葉さんは馬車を待った。


 それに皆が続く、今日の馬車は六人乗りのようだ。


 波賀はが京志郎きょうしろう警部も付いてきた。


 再び半眼で同じように、精査する「位置は、まだ変わりません」と告げた。


 馬車にやってくれ「陣防町一ノ七ノ一だ!」と吹雪さんが急ぎだと、いわんばかりに声をかけた。



 陣防町一ノ七ノ一/閑静なお屋敷 美空/に組の皆・京志郎警部


 扉を開けさせるのは、京志郎警部のお役目だ。


 警察だと声をかけるが、中が静まり返っている。


 私の出番となった、『天足』と唱え皆を中に誘う。


 そして、『隔離世』を展開した。


 『隔離世』から出るには術者を倒すか、それを乗り越える能力を持つかしかない。


 当然餓鬼には、そんな能力はない。


 私の前に前衛二人と吹雪さんが展開、後ろにみことちゃんと京志郎警部が展開する。


 京志郎警部は今日の装備に、銀の弾丸を持ってきたらしかった。


 吹雪さんはいつ何が降って来てもいい様に、私の隣に立っている。


 そして餓鬼の軍団が現れた、控えめにいって小隊規模三十匹は居るだろう。


 私は柏手かしわでを打った、これで餓鬼の三判器官が狂うはずである。


 事実何匹かがフラフラになるが、数の上で餓鬼のほうが有利だった。


 仕方ないので庭側に展開している餓鬼に、最大威力で『神鳴』を放つ。


 この前は女幽霊に当てるために、最小限に絞っていたが今回は本気の『神鳴』である。


 直径四十メートル内に展開している餓鬼が、一瞬で倒れ伏した。


 今の一発で二十は滅んだだろう。


 少なく見積もっても、十五は倒れている。


 先頭のまだ知能残る餓鬼が何か、いおうとしたが前衛が斬り込んだ、


 吹雪さんが小太刀の側を抜いた、霊刀であることが私の視覚で分かった。


 京志郎警部は珍しい拳銃を持っていた、ジグザグリボルバーといわれる拳銃であった。


 一発目を撃った。


 面白い仕組みのようで、一発で排莢こそしないもののすぐに二発目が打てる仕組みのものであったらしい。


 吹雪さんがモーゼルC96と迷った、といっていた拳銃だ。


 だが吹雪さんは装填数の多く、威力も強いモーゼルC96にしただけのことだったのだ。


 前衛陣はお互いに五匹ずつを片付けた後であり、残りは屋敷内に逃げ込んだようだった。


 私は隔離世の展開範囲を縮める、という荒業を使った。


 屋敷から追い出されるように、餓鬼がはみ出て来る。


 逃げられなくなって、案の定突っかかって来る。


 だが、前衛陣の相手ではない。


 三匹が斬られ、二匹が殴り倒された。


「わらわたちの出番は無かったの」と京志郎警部と話す、みことちゃんがいたのであった。


 後の処理は、京志郎警部に任せて出て来た。


 一度『隔離世』を畳んで、黄泉透しと神命を再度使ったが反応は無かった。


「大丈夫です。もういません、餓鬼は」と私が伝えた。


「餓鬼ってあんなに、増えるのですね」と私が、興味深げなことをいった。


「確かに珍しいな。あそこまで増えた餓鬼を、見たのは久しぶりだ」と吹雪さんもいった。


「さて帰りましょうか、もう餓鬼は出ないでしょう」と私が、区切った。


 私は肩にしっかりと留まっている白い鳩を突いた、「くるっぽー」と鳩が答えた。


 私は文を軽く書き、通信筒の中に入れて蓋を閉めた。


 それを確認した真っ白い鳩は、朝焼けの空に飛び立った。


 万年筆のような高価でハイカラなものを持った巫女は、私だけであろう多分そう思いながら。


 馬車に、乗るのであった。

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