第二話 肉食

 御霊神宮 美空


 次の日は、官憲と記者ブンヤさんは大忙しだった。


 一家全員が、白骨で見つかったのだ。


 長屋の大家が家賃を取りに来て発覚した、そういうものだった。


 まだ姫から連絡がこない、だが事態は悪化している。


 けれど私たちから姫に働きかけることはできない、一度お会いしたことがあるだけでその際も密談だったのだから。


 正直にいえばどこの誰ともいえない、知っているのがおかしいのだから。


 そして神社の出番ではない、どちらかといえば寺の出番だ。


 神社の氏子であるならまた話は違うのであろうが、今はなんにも出来ないのである。


 こういう場合は、大体まだ妖魔あやかしになってない。


 それか、グレーゾーンのような状態なのであろう。


 まだ官憲の手の中で納まる範囲ということになる、ただ殺人犯が放し飼いになっている状況というのは、あまり気持ちのいいものではない。


 護身は必ず怠らず行うもの、と身を締めた。



 御霊神社/お札所 みこと


 ひまじゃのう、と思っていた。


 事実、人が来ないのじゃ。


 今日に限って、巫女頭の美空みそらも来なかった。


 わらわ、なんか悪いことでもしたかのう? と思えるほどに人が来ず、集まるのは鳩ばかりといった様相を呈していた。



 御霊神社/社務所内 美空


「……であるからして、各々おのおの方気を引き締めてかかられよ」という、諸注意があった。


 事実殺人犯を官憲が、追えてないからであった。


 誰かがいった「迷宮入りになんて、ならないよな?」と無責任な一言だと思ったが、追求できる立場にはいなかった。


 社務所を出て少し歩いた時だった、羽ばたく音が聞こえた。


 それもとても近くで、真っ白い鳩が通信筒を付けて私の左肩にとまった。


 その真っ白い鳩は、右側を向いて左側を見せつけて来た左脚に通信筒が付けられている。


 私は通信筒を開けて内容を読んだ、その足で社務所に戻りおさに耳打ちをした。


「お仕事で出ます」と。



 溜まり場 美空/吹雪


 また溜まり場には私だけだった、ただ真っ白い鳩は返信を寄こせといわんばかりに私の左肩にとまったままだ。


 鳩を乗せたまま大家さんのところに行って、吹雪さんを呼んでもらう。


 後は、溜まり場で待つだけだ。


 直ぐに吹雪さんが来られた「手紙の返信が、欲しそうです」と真っ白い鳩を紹介した。


 そして電報を、吹雪さんに渡した。


「これはこれで厄介な、出現場所が自在になっている」といった。


 私も同じことを考えていた。


 例の異能は疲れるからやりたくはないが、今回はその異能の出番だった。


 異能/黄泉透し、黄泉の国に繋がっている妖魔あやかしを直接見つける方法である。


 但し直接見なければいけないので時間がかかり、かかればかかるほど消費も激しくなっていくそういう異能だった。


 二つ融合させられればかなり強力な異能になるのだが、残念ながらもう一つは持っていなかった。


 それは、場所を特定できる異能だ。


 餓鬼の行動時間は主に夜間になる、人と反対のことを行うのだ。


 そして気を付けなくてはいけないのは、相手は肉食であるということだ。


 神命と組み合わせて黄泉透しを使うことにする、神命も異能だ。


 二重掛けということで精神力の浪費は出ることが致し方なかったが、現時点で正確な場所まで授かろうとしたらこの手しかない。


 伴天連系の異能である、ダウジングを知らないのだから、場所を特定する方法がソレしかないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る