第四話 事件

 溜まり場 美空/に組の皆・京志郎警部


 今回は同行するのが初めてということで、波賀はが京志郎きょうしろう警部は指揮順でいえば私より下位で三級という特殊扱いになるとのことであった。


 本来の趣旨からいえば四級や五級でも問題はないといったところなのだが、昔で言うなら元服も迎えていない子供らに指示されるのは……という特殊事情を鑑みた結果三級という扱いになったそうなのだ。


 他の組と行動することがあれば四級に戻るのだそうだが、【に組】と組むときは特例ということらしい。


「波賀京志郎警部であります、以後お見知りおきください」といったあと、一拍おいて「それで仕事というのは」と京志郎警部が口を開いた。


「神出鬼没の妖魔あやかしを、退治することだよ。妖魔は妖怪にはじまり渡来種の魔物や魑魅魍魎にまで及ぶすごく広い範囲を妖魔といって括っている、この国特有の言葉だ」と吹雪さんが丁寧にいった。


「ということは、巷の事件で解決のできなかった洋獣退治ですか?」と京志郎警部がいった。


「それで間違っていない」と吹雪さんが告げる。


「次は日本橋界隈に出るそうだ」因みにこの世界日本橋という地名は三か所ある、といってもこの都市の日本橋と東の都市と西にある都市の地名でしかない。


 その都市も三都府同時に名乗ったそうなので被っただけであるといわれている。


 京都都と大阪府と東京府である、また東京府にある江戸城あとは御所と呼ばれている。


 今上きんじょう陛下へいかが年に数度、近衛と一緒に行幸ぎょうこうなさるときに泊まられる場所だと聞いている。


 近衛は特級か一級を所持するといわれる、近衛少将の中に一級が混じるのみで他の階位には特級しかいないとも聞く。


 くだんの私たちの姫君が特級を持つのは、数少ない例外だそうである。


 話が、ずれてしまった。


 つまり今回の事件については、例外事項が存在するということであろう。


「私のところには、場所は届きませんでした。姫君の文から、ですね」と吹雪さんに聞いてみた。


「そうだ、それであっている」と吹雪さんが、答えた。


「巷の事件というのは、なんじゃ?」とみことちゃんがきいた。


「巷に神出鬼没の獅子が出て、夜な夜な人を襲っているというものだ。まだ記者ブンヤには知られていない。精々大型犬に噛み殺された、程度のことしか書かれていないはずだ。今回で仕留めるぞ!」と力を入れて吹雪さんが語った。


「出現場所は確実に抑えられる、すでに署長に抑えてもらっている。ほどほどにな、餌が入って来ないと出現しない。ことになる場合も、考えてある。私は馬で出る、君らは馬車を用意してある、警部は馬に乗れるな!」と吹雪さんが大胆不敵にいった。


 京志郎警部は「馬には乗れますし、持って来てあります」と答えた。


 馬車はもう、町長屋の前に到着していた。


 私たちは馬車に乗る、紅葉さんが窮屈そうにして馬車に乗った。


 日本橋のたもとまでは直ぐだった、先導してくれたのは警部と吹雪さんである。


 そしてそんな時間もかかってはいない、私は馬車から降りるのと同時に霊視を発動させた。


 周囲の確認のため、である。

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