第6話 突撃!栞里のスゴイ家
「あー…なんかね? 獄人になると目の色が変わるらしいのよ」
「黄色い目の人もいたんですけど、人によって目の色は違うんですか?」
竜二さんについた3人の獄人たちは、みんなして目が黄色かった。
「生前にどれだけ悪いことをしたか…あと、どれだけ悪い性格だったかによって目の色が違うみたいなの。それほど悪い人じゃなかったら緑で、緑の人よりちょっとだけ凶暴だったら黄色…って感じかな」
栞里さんの家まで歩きながら、彼女は語る。
「なんか、死者によっては何人も獄人がついてたみたいですけど…」
竜二さんの他にもそういう人はいたが…
「詳しいことは分からないけど…与羽さんもなんとなく分かってるんじゃないかな?」
「…要するに…『そういうこと』ですね?」
そういえば、何人もいる場合は獄人が全員「黄色かった」なと思い返して、栞里さんも同じことを思ったのか、私たちは2人してクスクスと笑った。
(竜二さん…今ごろ怖い3人にしごかれてるのかなぁ)
しばらく歩いた頃、アパートのような建物の前で栞里さんが立ち止まった。
「ここですか?」
「うん。1階の右端の部屋だよ」
「角部屋ですか。いいですね!」
栞里さんが鍵を開け、中へ案内された。
玄関に入って右手には、手前からお風呂、トイレがあるようだ。
その先にドアがあり、そこを開けると…
「それから…ここがキッチンよ」
「なんていうか…ミニマリスト? って感じですね」
右側には壁付けキッチンがあり、その横にはレンジを乗せた冷蔵庫。さらにその隣には引き違い窓がある。
「本当はこれだけだと寂しいからテーブルのひとつでも買おうかと思ったのよ? でも、1人でご飯食べるのに、わざわざ大きなテーブルに座るのもなんか悲しいじゃない…」
なるほどね。それは虚しい。だからダイニングキッチンがガラ空きなのか。
「そのかわりね? 自分の部屋はこだわって作ったのよ!」
そう言うと彼女は、ダイニングキッチンの奥の障子を開けた。
「…おお!」
中は10畳ほどの和室だった。
右側にはマットレスのようなソファがあり、真ん中には丸い木目調のテーブル、左側にはテレビもある。ソファのすぐ右隣には小さな本棚があり、部屋の真ん中の掃き出し窓からベランダに出られるようだ。
「…『おお!』…とは言ったけど、シンプルな部屋ですね」
「まぁね。生きてた頃に住んでたアパートも地味だったわ…本当はもっと可愛くした…」
「ゴルぁ! 誰に向かってクチ聞いとんじゃボケがぁ!」
突然、外からドスの効いた声が響いてきた。竜二さんではなさそうだ。私たちはベランダに出て様子を見た。
「あれ? 竜二さんがいる…」
ベランダの向こうは立派な日本庭園だった。
手前に松の木が生えていてよく見えないが、こちらから十数メートル先に縁側が見える。
開けっぱなしにされた障子から竜二さんの後ろ姿と、その奥に3人の獄人…
なんだか面白いことになっている。私の「突撃したい欲」が急激に上昇するのを感じる…
「ところで、テレビって観れるんですか?」
「つけてみる? はいリモコン」
ポチッとな。
「ヘルトーーク!」
「あ、ヘルトーークの再放送やってる!」
「………ヘルトーーク…」
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