第4話 やってきました! 地獄!

「えっ…あ…ごほん…そのままの意味だ。基本的に普通の人間として接するが、地獄にふさわしい性根の腐った人間だと分かった場合、すぐにでも獄人の仲間入りというわけだ…」

おいおい大丈夫かよラミーのやつ…早くも威厳のベールがピラついてんぞ…

幸い、悪人ヅラの男はこれ以上なにも言ってこな…


「性根が腐ってるかどうかは、どうやって見極めるっていうんだーい?」

また変なやつ出てきたぁ! 悪人ヅラの横にいる女…見た目は普通なくせして…ラミーに合図送って、ここは俺が答えるか…


「お前たちが地獄にふさわしい人間かはこれからの地獄生活で見極めるのだ。悪行に心当たりがあるやつはせいぜい悔やむんだな!」

「先生ー、いきなり地獄行きが決まった私たちにその言い方はないと思いまーす。ていうか前置きが長いので早くしてくださーい」


「…まさに今、地獄へのゲートを開こうとしたところだ」

なんなんだこいつは…! クソムカつくぜ!

「ラミー、ゲート頼んだ」

こんな生意気なやつ、マジで地獄行きになりゃいいんだ!


★ ★ ★


「いよいよゲートが開きますね」

「ああ…それよりお前って思いのほか勇気があるんだな。あんな挑発するようなことよく仁王立ちして言えたな…」

先ほどのような紫色の光を見守りながら、竜二さんは呆れたようにつぶやいた。

「だってあのおっさん、なんか気に入らないんですもん」

「…そうか」


光のゲートが完全に開いたとき、高圧的ではない方の番人が「ここから中に入りなさい」と指示をした。

見ず知らずの死者たちが「誰か先に行けよ」とばかりに首を左右に動かしている。


「…前置きが長くて悪かったな。だが、この状況で先陣を切るあたり…お前はなかなか勇敢な性格なんだな」

「あのとき死んだときに比べたら、大して怖くないだけですよ」

仕方がないので私がゲートに入った。次いで竜二さんが。彼の近くにいた男性が、次いで女性が…よしよし、みんな付いてきている。


ゲートを抜けると、そこには文面を感じさせる景色があった。

地獄とはどのような場所なのかと想像したとき、岩がたくさんある火星のような場所に、大釜や針山があったりするのが定番だ。

だが、私たちが今立っているのは、先ほどの広場の芝生をそっくりそのまま赤いレンガにしたような場所。丸い広場の真ん中、私たちが降り立った場所には、何やらモジャモジャした黒い模様がある。そして極めつけは…


「街があるんだな」

「高い建物も結構ありますね。粘土みたいなのでできてますけど…」


都会とまではいかないが、地方都市のような規模の街並みが広がっているのだ。

地獄といえば火星のような場所を思い浮かべる…と言ったが、そこは正解だった。

街のはずれには岩山があり、空はキムチ鍋のような色をしている。食べたくなってきた。


「火星に街があるとこんな感じなのかも…」

「火星…みたいだな」


予想に反して生活水準が高いらしく、それについては他の死者も呆気にとられていた。


「気に入っていただけたかな?」

「今日からここがお前たちの拠点となる!」


いつの間にやら2人の番人も現れ、光のゲートは閉ざされた。

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