第3話 新しい朝がきた
ラミーとハモってしまった。
「死人特別法案…? というのは一体…」
「まぁ詳しい話は死人を地獄に招いてから! ほら、そろそろ約束の時間だよ!」
どういうわけかチャリアス様は楽しげで、間髪入れずに出て行っちまった。
「なぁラミー」
「何? ガルシア」
「しんどいな、ラミー」
「しんどいね、ガルシア」
★ ★ ★
「竜二さん」
「なんだ?」
「そろそろ時間ですね」
「そうだな…」
昨日はあれほど不安や不満を口にしていた死者たちも、時間が近づくと覚悟が決まったのか大人しくなった。
あぐらをかいた竜二さんは、ふとこのようなことを聞いてきた。
「随分と落ち着いてるな。…というか、もはや呑気だな」
「なんでそう思うんですか?」
「だってよ、もうじき地獄行きだってのに寝転がってんだぜ?」
確かに私はいま仰向けになっている。
「そりゃ昨日は憂鬱だったんですけど、もう決まったことだし、逃げられもしないし…それに何より芝生は気持ちいいし」
「…そうか。そういう心構えでいるくらいがちょうどいいのかもな」
そのときだった。どこからともなく
「いよいよですね…どうなるんだろう…」
誰が来るのか、どのように地獄に案内されるのかまったく知らないので少しだけワクワクしていた。
…すると、広場の真ん中あたりから、突然紫色の小さい光が現れた。
その光は瞬く間に大きくなり、最終的には5メートルほどの高さまで広がった。
あれだけ大きいのだから、出てくる地獄の番人もさぞかし背が高いのかと思いきや…
「なんか人影が見えますね」
「そうだな」
光が小さくなるにしたがって番人の姿もよりはっきりと見えてきたのだが、その姿は予想に反して大きくない。…いや、人間からしてみれば充分大きい。2メートルほどだろうか?
地獄の番人というくらいなので、きっと肌も真っ赤なのかと思いきや…
「割と見た目は人間に近いですね」
「ああ。背が高い普通の人間みたいだな」
おそらく灼熱の釜で拷問をしたりするので、そのぶん日焼けもしたのだろう。小麦色の肌が健康的にも見受けられる。
ただ、いくら見た目が人間に近いとはいえ、あきらかに人間ではないと分かる身体的な特徴が2つある。
1つは、額にある小さな角。もう1つは、地面につきそうなほど長い牛のような尻尾。
光が完全に消え、2人とも実に険しい表情をしている。
そんな中、片方の番人が咳払いをしたかと思うと、1枚の紙を取り出した。
「皆のもの、ようこそ死後の世界へ。私は司会と案内を担当するラミーだ。これから我々は地獄へと向かうが、死人の君たちに危害を加えるつもりは当然ない。だが、くれぐれも油断はしないように。この1年の間、地獄行きが妥当と判断される可能性も充分にありえる…その暁には、本当の意味での地獄行きとなるであろう…」
マイクを使っているわけでもないのに、広場の隅々まで低くゆっくりとした声が響いた。
番人を目の前にした死者たち。誰も楯突く人物はいない…
「本当の意味での地獄行きってなんだよ? ああ?」
ここにいた。その名は竜二さん。
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