第2話 死人と番人

「いやぁ、大変なことになりましたね。私たち明日から地獄ですもんね」

あぐらをかく彼の横に私も座った。

「…それがなんだ」

限りなくぶっきらぼうに吐き捨てられた。


「私の名前は清水与羽しみずよはねっていいます」

彼はやはり食いついた。

「ヨハネ? お前そんな名前なのか?」

私は小さい頃から名前を名乗るとこのような反応をされる。

「はい。親がなんとなくで付けた名前らしいんですけど、『与』えるに『羽』って書いて『与羽』って読むんですよ。いい名前だと思ってます」

「ほーん…与えるに羽か…羽を与える側か、羽を与えられた側か…どっちなんだろうな、お前は」

見た目は40代なのに、なんだか中学二年生のようなことをつぶやく彼。


「あなたのお名前は?」

「俺は中川竜二なかがわりゅうじだ」

「竜二さんはどんな死に方をしたんです?」

「下の名前で呼ばれるのは気に入らねぇし、どんな死に方をしたのかって聞き方もどうかと思うぞ、姉ちゃん」

竜二さんは終始、冷めた目をしている。


「すみません。気になっちゃって。ちなみに私の場合、自転車に乗ってたら車に轢かれて死んだらしいです」

「まだ若ぇのに、ご愁傷様だな」

「それで、竜二さんはどんな死に方を?」

「しつけぇなお前! どんな死に方かって? 『ろくな死に方じゃなかった』…これで充分だろ」

「すみません。気になっちゃって」

竜二さんに強めに怒られてしまった。彼の声に周りの人たちもこちらを見ている。


「こんな生き方してりゃあ、地獄行きになるだろうとは思ってたよ。どんな形であれ明日から地獄なんだ。覚悟はできてる…」

うなるように語る彼は、どこか武士のようにも見えた。




———次の日、番人たちは…———

「というわけで! 前説と引率はラミーくんにお任せしまーす! みんな拍手ー!」

拍手は小さかった。チャリアス様に対する最大級の抗議が、この小さな拍手だった。

バタン…閉まったドアに耳を近づけ、しばらく経った頃にラミーは叫んだ。


「ふっっっざけんなァァァァァ!!」

ガチャッ

「言い忘れてたー!」

「アッ!?」


去っていったはずのチャリアス様が不意打ちにドアを開けてきた。ラミーはもう完全に真っ青だ。可哀想に…


「ラミーくん1人じゃ不安だろうから…ガルシアくん!」

「はいっ!?」

どういうわけだ? なんで俺の名前が…


「ガルシアくんもラミーくんの付き添い、お願いねー!」

「えっ」

マヌケな声を出しちまった。今なんと?

「付き添い…と言いますと?」

「そのままの意味だよ! ラミーくんだけに任せるのは荷が重いかなーと思ってさ。もし説明とか引率に間違いがあったらサポートしてあげてちょうだい」

「はい…分かりました」


まぁ、今日1日だけだし…ちょっとサポートするくらいなら別にいいか。ラミーだって1人で心ぼそ…




「ちなみにラミーくんとガルシアくんには、これから1年間『死人特別法案しにんとくべつほうあん』に携わってもらうから、そのつもりで!」


「…はい?」

「…はい?」

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