第3話 上京?
肩まである黒髪のストレートヘアに三白眼、
時折、見える八重歯がキラリと光る少女がいた。
ターコイズブルーの革ジャンは所々すり減り、
ナイフで切られたような後もあった。
タイトなブルージーンズに巻かれたホルスターには、
警棒の他に、見たこともない銃が収められていた。
「 アンタがサノ=ユタカね」
少女は僕の口に銃を突っ込みながら尋ねる!
「アガッ!アガッ!」
「アガアガ言ってないで答えなさいよ!!」
「僕の口に銃を突っ込んでいるのは君だろ!」
なんて言えるはずもなく、全力で首を縦に振り、
上下の歯で銃口をカチカチとカスタネットのように
鳴らした。
「そう、アンタね」
少女は僕の口から銃口を抜いた。
「うぇっ!ゲホッ!ゲホッ!しっ死ぬかと思ったぁ…」
むせる僕に構う事なく、少女は唾液で汚れた銃口を、
テーブルクロスで拭きながら言った。
「行くわよ」
「えっ?行くってどこへ?」
「決まってるじゃない」
「オル…タ…ナ…ティブ?!」
「どこですかそれ、聞いた事もないし、
施設か何かですか?」
「いえ…もう一つの"世界"よ」
「もう一つの世界……」
佐野豊は唾をゴクリと飲み込んだ。
「そ!その世界で事件があってね、アンタの力が必要なのよ」
「その事件に僕が関係してるって事ですか?」
「んー、少なくとも"アンタ"であって"アンタ"じゃない」
「えっ?どういう…」
「サノ=ユタカよ!」
「?!………………………僕じゃん」
「だぁーーもう!!メンドクサイ!
説明とかアタシ嫌いだし、
無理矢理にでも連れてくから!!!」
「えっちょっ!」
カポッ!ガチャン!!重い金属音が響く。
ヘッドギアのようなもので視界は遮られ、
両手両足は固い金属でがっちり拘束された。
「よいしょっと!」
「うわわぁ!」
少女は僕を担ぎ上げ、走り出した!
「うわぁーー酔うぅーー吐きそうぅー」
「うるさい!黙って!!」
「あっ!いい場所があったわ」
キキィッ!!!
「ぐぇぇぇっ!!!きゅ…急に止まらないでぇ…」
僕の胃は圧迫され、今にも吐き出しそうだった。
「ここら辺なら誰もいないわね…」
「"シェリー"より"イージス"へ
転送装置の使用許可を願います。」
(了解…)
「シェリィ?イイジス?転送…装置…
一体…何が起きてるんだ…
あぁ……駄目だぁ…意識がぁ……………」
僕は気を失った……。
きな…さ……、きな…さ…い、
「起きなさいったら!!」
バチィッ!!!
「だぁ~痛ッッてぇッ!」
「叩くことないでしょ!叩くこと!!
あぁ…ほっぺの感覚がないぃ…」
「着いたわよ」
「ここは……」
そこは…
真ん中にブラウン管テレビが一台置いてあるだけの
真っ白い部屋だった。
「ボスがもうすぐ来るわ…」
少女の顔つきが変わった
ブゥゥゥゥン……!
ブラウン管テレビに"A.E.G.I.S."の文字が浮かび上がった。
「初めまして…佐野…豊君
私はこの組織の設立者"エフ"だ…」
「初め…まして…」
「画面越しの挨拶で申し訳ない…、私は今、"手"が
話せなくてね」
「ここから先は、佐野君に馴染みのある人に
説明を任せよう。
「それではまた…」
プチュン…!
「馴染みのある人って…誰だろ…」
ガチャン!
「はいは~い!ここからはワタクシが説明
いたしま~~すぅ!!!」
「えっ?!アッ!アカリさん?!」
「やっほ~佐野く~ん!それにシェリリンも~」
「その呼び方やめてって行ってるでしょ!」
「あのアカリさんが?!駄目だぁ~
頭がついていかないやぁ~」
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