まあまあ

 川を見ていた。川。流れている。それを何も考えずに見ている。俯瞰してみる。変な男が川を眺めている。一体何をしているのだ。

 より遠くから眺めてみる。川を境目に、男がいる側は住宅街、向こう側は商業施設が並んでいる。パチンコ屋や、眼鏡屋、車屋、ドラッグストアなどである。

 さらに遠くから見ると、男はよりちっぽけな存在に見える。街はそれなりに賑やかで、店には人が出入りしているし、車通りも多い。そんな中、その男だけが独りで川を眺めている。孤独だろうに。

 もっと遠くから見下ろすと、その街は都会でもなく、かといって田舎でもない、中途半端な街だということがわかる。新しさと古さが混同している。

 ついに雲と同じ高さになった。男はもはや一つの点に過ぎない。目を凝らさなければ見ることができない。

 大気圏を飛び出すと、いよいよ男の存在は確認できなくなる。男が何を考え、何をしているのか、わからなくなる。

 銀河を飛び出すと、男どころか、地球すら目視できない。様々な光が浮かんでいて、男がどの辺にいるのか、全く見当もつかない。

 より高次元から見ると、男どころか、宇宙さえも見ることができない。その次元の事象しか確認することができない。それは文章では表現できない。

 あらゆる因果から解き放たれて、男なんてどうでもいいと思うようになった。そしてだんだんそうした考え方そのものも忘れていった。

 

 そんなことを川を眺めながら思った。家に帰ってうまい飯でも食おう。

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ラボ 春雷 @syunrai3333

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