入れものがない

 入れものがない!

 せっかく何か大事なものをくれようとしているというのに、入れものがない。

 どうしよう。

 僕は何かを僕にくれようとしているその人に、少し待ってくれと頼んで、走り出した。

 行くあてなどない。

 ひたすら走って入れものを探した。

 でも僕には、金も、方向感覚も、人望も、家すらも持っていなかった。とにかく何もなかった。

 何も思いつかないまま、元の場所へ戻ってしまった。

 僕に残されているものは何だろう。

 僕は手のひらを眺めた。

 僕はその人に両手を差し出した。


 あれから5年経った。僕は未だに入れものを探している。とにかく入れものが欲しい。でも入れものは手に入っていない。入れものどころか僕は何も手にしてはいない。入れものも欲しいし、その他にも色んなものが欲しい。しかし色んなものを得るためには、まず入れものが必要だ。その入れものがない。話にならない。


 入れものを探すため、僕は意を決して、ドンキホーテに入った。

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