刑事
昔から自分が刑事になって事件を華麗に解決するという妄想をしてきた。その妄想はやがて細部が鮮明になり、事象と事象の繋がりが明瞭になってきて、俺は本当に刑事なのだと思うようになってきた。
俺は道行く人に訊いた。
「俺は刑事か?」
皆違うと思う、と言う。というより、大抵の人は答えない。
誰も現実を見ていない。
俺の近所で男が殺害された。
俺はよれよれのトレンチコートを着て、葉巻を吸い、港を歩いた。風に吹かれて、今回の事件の謎について思いを馳せた。
今回の犯人は誰か?今回の犯行の手口は?動機は?
事件は論理的に解決されなければならない。
俺は頭脳を最大限に使い、事件の全体像を掴み、細部について一つ一つ検証した。
そして思い至った。
犯人は、
その夜、俺の家の前に警察がいた。
「署まで来てもらおうか?」
眼鏡をかけた厳しい狐顔の男がそう言った。
翌朝に新聞で俺に関する記事が載った。
誰も現実を見ていない。
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