❤❤

確かあれは…、5月の始め頃だったと思う。

この中庭にも沢山の花が咲いていて、とても綺麗だったな。

私は昔から緑で溢れているところが大好きだったから、入学当初はこの中庭を見つけてめちゃくちゃテンションが上がっていたっけ?

休み時間の度にこの中庭を訪ねては、綺麗だな~とか、癒されるな~とか、ぶつぶつ独り言を言っていた記憶がある。

そんな時、出会ったのが先輩だった。

いや、出会った、というより、見つけられた、のほうが正しいかもしれない。

先輩に見つけてもらった日、私はこの大木の木の下で、ついついうたた寝をしてしまったのだ。

そうだった、そう、先輩と出会ったあの日…。



「…ぶ?だい…う……てる?」


遠くで、誰かの声が聞こえた気がした。その声は、優しい声色で、穏やかなあったかい声で…。


「おーい、君?こんなところで眠ったら、体痛めるよ?」


肩をゆすられた感覚がして、ためしにそちらに手を伸ばすと、温かい温度が伝わってきた。それはまるで、春の野原に寝転んだ時に、私を優しく包んでくれる草原のようで。

思わず、そちらに体を任せてしまう。

は~、あったかくて気持ちいい~、なんだか春の香りがする。


「えっ!?ちょ、君!?」


そんな声が聞こえたのにも関わらず、私はまた眠りについてしまったのだ。



そうだった!先輩と初めて出会ったのは、先輩の胸の中だった…。

またもや私の頬が、熱を帯びていく。

あ~、そういえば、よくよく思い出してみると、そんな出会いだった…。

恥ずかしくて恥ずかしくて、忘れよう忘れようって思ってたら、ホントにそこらへんの記憶があやふやになってたんだ。


目を覚ました時、目の前に飛び込んできたのが見知らぬ美少年でホントびっくりした。

そして、その人の話しを聞く限り、100%私が悪いって知って、めっちゃ謝ったんだよね。


あ、あはは…なんかもう、消えたい…。

先輩との時間を思い出したら、告白したいって気持ちになれるって思ってたけど…。なんかもう、逆効果なんだけど。


でも、この出会いが、先輩を好きになったきっかけなんだよね。

めっちゃ先輩に迷惑をかけたのに、怒るどころかずっと笑顔で…。

優しい人だなって思ったの。

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