第2話
ギルドメンバー達一行は旅を続けていた。彼等より少し距離を置いて、勇者が杖を付きながら、ヒィ…ヒィ…と息を切らしながら歩いている。
「ちょっと〜、待ってよ〜、置いて行かないでよ…」
勇者を見た年寄りの魔法使いは「まだ10代なのに、このワシよりも体力が無いとは…」と、少し呆れた様子で見ていた。
彼等は、勇者が自分達の場所に来るまで待って、また距離が開いたら、また少し待つと言うのを繰り返していた。
その為、近くの隣村に1〜2時間弱で着く予定が、約半日近く掛かった。
森の木陰で、彼等メンバーが休んでいると、ヨチヨチ歩きの勇者が、メンバーの近くにやって来た。
「はい、勇者様…ほおら、こっちよ、お手手がなる方まで」
僧侶の女性が、からかう様な仕草で勇者を迎える。
普通の人なら大した距離でもない、移動が彼には絶望的な程困難な移動になっていた。
「ゼエ…ゼエ…」
「相当な疲労だな。まるで病人みたいだ」
「くそぉ、あの老人め、今度会ったらタダじゃ済まさない」
そう言いながら、彼はメンバーと一緒に休む事にした。
その時だった。
「キャー!」
どこからか、女性の悲鳴が聞こえて来た。
彼等は起き上がり、周囲を見渡すと、少し離れた位置にゴブリンに襲われて震えている女性を見付けた。
「あれは、近くの村に住む女性ね、助けないと!」
「待って」
勇者が立ち上がり、皆を引き止めた。
「相手は1匹だ、僕が倒す!」
「おい、大丈夫か?」
戦士の男性が不安そうに話し掛ける。
「あれ位なら、僕が倒して見せる。その間に君たちは女性を救ってくれ」
その言葉に周囲は返事をした。
勇者は、勢い良く杖を付きながらフラフラした足取りで、ゴブリンの近くへと向かう。
「ヒィ…ヒィ…」
「わずかな距離を移動するだけで、既に息切れしているわね…」
「あの状態で、どうやって倒すのやら?」
彼等は、勇者がゴブリンとサシの勝負に挑むのを見計らって女性を救出しようとする。
即、戦闘開始を待つのに約数分、彼は何とかゴブリンの側まで到着した。
「ゼェ、ゼェ…か弱き少女を脅かす魔族め、俺と勝負しろ!」
(村の女性よりも、今の勇者の方が、相当弱そう…)
僧侶は、直ぐに彼を復活させる準備をしていた。
「ウオォリャアーッ!」
ポコ
「キイー」
ブン
勇者とゴブリンの激しい戦闘が始まった。
「オリャー」
ポコ
その戦闘を見ていた魔法使いが、戦闘データを計測する。
「どんな状態なの?」
「一応、勇者は、ゴブリンにダメージを与えているよ1ずつだけどね…。この様子だと彼を倒すのに、あと10回以上叩く必要があるね」
それを聞いたメンバーは、彼が戦闘終わるまでにスタミナが残っているのか、それが不安だった。
彼とゴブリンがお遊戯の様な戦闘している間に、戦士が村人の女性をメンバーの近くに連れて来た。
「あ…あの、助けて下さってありがとうございます」
女性は、そう言いながら、ふと…ゴブリンと子供の喧嘩見たいな勇者を見た。
「彼…大丈夫ですか?」
「自分に任せろと言うから、見てますが…危険な時は、応援に駆け付けますよ」
魔法使いが、女性に向かって話す。
「は、はあ…」
女性は、弱いながらも必死に戦う勇者に何かを感じた。
勇者の相手をしていたゴブリンは、鼻に虫が飛んで来て、クシュンッとくしゃみをする。
その息で勇者は後方へとフラフとバランスを崩した。
「おのれ…特殊攻撃を使うとは卑怯だぞ…」
(今のはクシャミだ…)
と、見ていた仲間達は言いたかった。
その瞬間ーッ
ボンッ
ゴブリンの後頭部に、強烈な一撃が加わる。
「おお、何だ?」
それはボールだった、近くの村で遊んでいた子供達のボールがゴブリンの頭に直撃した。
「キイ、キイー!」
ゴブリンは怒って、子供達に襲い掛かる。
「勇者の攻撃よりも、遥か遠くから飛んで来たボールの方が相当なダメージだったのか⁈」
戦士が呟くのを聞いた魔法使いがデータを確認する。
「その様だ、今のボールが当たった衝撃は、数値からするとクリティカルヒットに近いな、あと数回叩けば勇者が勝てるぞ」
完全に目の前の敵を忘れて、子供達を襲いに掛かろうとしたゴブリンに捕まり、勇者は必死に彼を叩く。
「コイツ、コイツ…」
ポコ、ポコ…と、叩いていると、最後の一回で、ボキッと何か崩れる音がした。
ゴブリンが、HP0になり倒れた。
やっとの思いで敵を倒した勇者は、ゴブリンの上に乗り掛かった状態で少し安堵した。
「勇者様ー」
助けられた女性は必死に戦った勇者に感動して思わず強く抱きしめた。
「助けてくれてありがとう!」
「ぐ、ぐるじい…。グヘ…」
勇者は村の女性によって意識を失った。
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