最弱勇者の冒険

じゅんとく

第1話

「ほら、勇者起きない」


母の言葉で目を覚ます勇者、彼は15才の誕生日に城の王様に会って旅をする予定だった。

世界を恐怖に陥れようとするマオーを退治するつもりだった。


「朝だー、よっしゃ出掛けるぞ!」


布団から起き上がった彼は急いで着替えを済ます。


「じゃあ母さん行って来るね」

「ちょっと待ちなさい」

「何…どうしたの?」

「朝食まだでしょ」

「ああ…もう、遅れちゃうじゃないか!」


勇者はパンを口に加えながら走って家を出た。


「全く慌てん坊ね…変なのに絡まらないと良いけど」


母は不安そうに息子を見つめていた。

彼は急いで走って小さな田舎町を掛けて行くと…


ゴンッ!


曲がり角で何者かと激しく衝突した。


「イテテ…全く誰だ!」

「イタタ…いきなり飛び出すな」


目の前に座りこんでいたのは、年老いた爺さんだった。


「全く、気を付けてくれよ、俺は今日大事な旅立ちなんだから!」

「コラッ御主、年寄りにぶつかって、謝りもしないのか?」

「ん…?だって飛び出して来たのはそっちだから、俺は悪くないもん」

「なんじゃと〜」


勇者は老人を見ずにそのまま走り出して行く。


「あの若者め…少し凝らしめてやる必要があるな…」


老人は呪文を唱えると、両手から不気味な光が発し、それを勇者目掛けて投げ飛ばす。一瞬勇者の身体が光るとそのまま消える。


「お…なんだ?もしかして聖なる神が俺に力を授けてくれたのか?」


勇者は、そのまま城へ行き王様に挨拶を済ませ、旅の仲間が居るギルドへと向かう。

ギルドで彼は女戦士と僧侶、魔法使いの3名を仲間にして旅に出た。


城下町を出て、隣町まで行く途中…広い高原を彼等は歩いて行く。すると前方にスライムが3匹出現した。


「お…スライムだ、ここは俺に任せてくれ」


勇者が皆の前に立ちスライムに攻撃しようとする、わずかな差でスライムが突進して勇者に体当たり。


ポンッ


「グハッ!」


勇者は倒れた。


それを見た皆は一瞬凍り付いた表情で勇者を見た。


「ウソ…」


たった一撃で勇者のHPは0になった。

他の仲間がスライムを倒し、僧侶が復活の呪文を唱えると、勇者は見事復活を果たした。


「何で…一発で倒れるの?」

「いや…自分でも分からないよ」

「ちょっと君のスペックを確かめて見よう」


魔術師が個人のデータが確認出来る装置を取り出して、勇者にピントを合わせてデータの数値表を調べる。


「ゲ…何だこりゃ」


魔術師が驚きながら言う。

それを見た他の仲間が一緒に覗き込んで同じ様に驚く。


「ウソでしょ…」


気になった勇者が、皆の前に行く。


「ちょっと見せてよ」


勇者が自分のデータ表を見る。

そこには…彼のデータ全てが1だった。


「なんじゃコリャ!」


LvからHP、体力、素早…全てが1と記されていた。


「見事に一本の棒だな」

「クソォ…これじゃあ、どっかの作者の学生時代の成績表じゃないかよ、なんだよコレは一体…」


不満そうな表情で勇者は、皆と一緒に隣町まで行く。

途中数匹の魔物が現れた、仲間達が戦闘して経験値を上げて強くなるが…勇者はLv1のままだった。


隣町に入ると町の入り口で遊んでいる子供達がいた。

その子供達の中で小さな女の子が勇者を見るなり近付いて来た。


「ねえ、一緒にボール遊びしよう」

「ああ…良いとも」

「じゃあ行くよ。それ〜」


ポン


ボールが勇者の顔に当たった。


「グハッ」


勇者は吐血しながら倒れた。


「ヒッ…イヤー!勇者様が死んじゃった〜!」


震えながら大泣きしながら女の子は逃げ去って行く。


「ちょっと、いくら何でも倒れ過ぎじゃない?」


皆は少し呆れた様子で勇者を見ていた。再び復活の呪文で蘇った勇者は少し気になる様子だった。


「ちょっと…もう一度、俺のスペック確認してくれない?」


魔術師が言われた通りに彼のデータ表を確認する。


「うわ…凄い事になっているぞ」

「教えてよ」

「勇者様のHPが0.5になっている!」

「何ソレ?」

「初めてHPが1以下の人を見たわ」

「正に虫の息か…」

「イヤ…これは虫と接触した時点で既にアウトじゃない?」


好き勝手な事を言っている仲間達、勇者が起き上がろうとした瞬間、小鳥が彼の肩に止まった。


「グワッ!」


再び勇者は、その場に倒れ込む。

僧侶が再度復活させて、改めて勇者のデータを確認すると…

勇者のHPは0.01になっていた。


「少数点以下の体力って、ちょっとヤバイのでは?」

「これじゃあ、モンスターと遭遇しても倒せないんじゃ?」

「モンスターが息を吹きかけた時点で即死してしまいそうだな」


等…メンバー達の視線がとても痛かった。


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