第15話リクのひとりごと

 リクはリクである。

この世界に来るまでは、ニホンという国で、ヤホのペットとして飼われていた。


 毎日、ご飯を食べて寝て、猫じゃらしでヤホと遊んで、それだけがリクの仕事だった。


 それなのに、こっちの世界へ来てみたら忙しい。

この世界の至高神とやらに、ヤホをまもるように言われてしまったからだ。


 リクは神獣だと言われた。ドウンという虎の神様だったらしい。

 もともとはエリーネとかいう至高神のところにいて、神様や使徒たちを背中に乗せて、このエリーネの世界や、地球や、他にもある色んな世界を飛んでいたんだって。


 その頃のことはよく覚えていないんだ。

急に神獣とか言われても困るよ。リクはリクなんだから。


 でも、至高神の言うことに逆らえないんだ。それは、リクを作ったのがエリーネという神様だからだって。よくわかんないけど、そうなんだって。


 ヤホはご飯をくれるし、やさしくしてくれるから、リクはできるだけそばにいてあげようと思ってる。なで回されてちょっとウザいけど。


 リクが神獣だと知ってから、ニホンにいた頃よりも、ずっと強くなったみたいだ。好きに体の大きさを変えられるし、力も強くなった。


 ヤホが怖がるから、見せないようにしてるけど、爪も鋭くなったし、口にきばも生えてるんだ。たいていの魔獣なら負ける気がしないな。


 ヤホの作るご飯は美味しいけど、彼女は戦うことができないんだ。

前には少し、トーヤに教えてもらってたけど、リクが見てもあれはダメだね。

腰が引けちゃってて全然ダメだ。生板まないたの上の肉なら平気で切れるのに、違いがわからないよ、リクには。


 でもまあ、ヤホにはリクがついてるし、トーヤも、トーヤの相棒のイツもいるから大丈夫じゃないかな。


 トーヤは人間にしては強い方だし、おそらくエリーネ神の加護かなんか付いてるね。なんかちょっと他の人間と違う感じ、体が無意識に動いてる。


 イツはリクと同じ神獣。大鷲のカルラだ。けっこう気位の高いヤツだけど、リクとは仲良くなった。

アイツ、意外に可愛いんだよ。獰猛どうもうそうに見えるけど、あれでも女の子だ。肉食だけど。


 イツはトーヤと、北の辺境って場所にいたらしい。イルアの森なんかよりもっと強い魔獣がうじゃうじゃいたらしいよ。


 そのせいか、イツはリクに「まだまだ甘い」って言うんだ。何が甘いのかわかんないけど、そうらしい。


  甘いって言えば、リクは、八穂が作ってくれる甘い物好きだよ。リンゴの甘煮とか、ゆで小豆も食べるよ、あと、パイも好き。


 向こうの世界にいた頃は、虫歯になるってもらえなかったんだ。いつだったか、食卓にあったお饅頭をガブッとやったら、えらく怒られたっけ。


 でも、ここでは食べてもいいんだ。八穂たちが食べてるものは食べても平気みたい。ホントは神獣は食べなくてもいいんだけど、食べるとおいしいし、幸せな気分になるんだな。


 そういえば、向こうの世界でボク大好きだったおやつ。ちーる? つーる? そんな感じのやつ。ヤホがあれと似たようなの作ってくれたんだ。


 肉を機械でガーッてやって、スープと混ぜてトロトロにしてさ。ちょっと味は違ってるけど、かなりうまかったよ


 あれはイツも気に入ったみたいで、「またあれ作ってくれないかな」なんて言ってることあるんだ。

リクもあれなら毎日でも大歓迎なんだけどね。


 さて、リクはこれから、森をパトロールしてくるよ。

このあたりには弱い魔獣しか出ないけど、たくさん増えると危ないからね。


それじゃ、またね。


 あ、そう言えば、日本では2月22日は猫の日らしいよ。

向こうの猫たち、おいしいもの食べさせてもらったかな。

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